2021.06.25 【空質商品特集】
5月単月として過去最高の出荷台数と金額ー。日本電機工業会(JEMA)が今月発表した空気清浄機の国内出荷実績だ。新型コロナ禍で高水準の出荷が続くが、空気清浄機だけでなく、ウイルス抑制や除菌にフォーカスした家庭用、業務用の除菌装置も活況を呈す。新型コロナの脅威が生活スタイルと必需品を変え、ニューノーマル(新しい日常)として定着し始めている。
高水準の出荷続く空気清浄機
2020年度、空気清浄機の国内出荷台数は前年度比76.9%増の358万6000台、出荷金額は同2倍の1094億6200万円に達し、ともに過去最高を記録した。4月以降も単月で過去最高を塗り替える出荷が続く状況だ。
空気清浄機は、HEPAフィルターを搭載し、空気中のウイルスや菌、花粉、微細なほこりなどを捕集する構造が基本。シャープの「プラズマクラスター」のように、イオンを発生させる装置を搭載し、ウイルス抑制や消臭などに効果を発揮する製品も国内では人気だ。コロナ禍で衛生・清潔ニーズは、家庭に限らず、商業施設や飲食店、医療施設などでこれまで以上に高まり、大型品を含めて空気清浄機関連の需要を押し上げている。
除菌装置の開発、製品化がコロナ禍で加速
特に、コロナの脅威を目の当たりにしたことで、除菌に対するニーズはひときわ高まった。次亜塩素酸やオゾン、紫外線といった除菌に効果があるとされる技術を使った除菌装置の開発、製品化がコロナ禍で加速した。
「大空間向けの大型タイプで勝負する」。大型空気清浄機を5月に発売したアイワジャパンの渡辺英基常務取締役営業本部長は、業務用途で需要をつかむ姿勢を示す。
アイワが発売したのは、HEPAフィルターとオゾン発生装置を搭載し、微細なほこりなどの捕集とともに除菌もできる製品だ。最大60畳相当にまで対応する大能力が〝ウリ〟。小型のオゾン発生器の人気が高まる中、業務用途に特化した大型品で、医療関係を中心に導入を狙っている。
マクセルもオゾン発生装置を展開する1社だ。業務用、家庭用それぞれの豊富なラインアップが強みで、25日には、家庭用オゾン除菌消臭器「オゾネオ」シリーズの新製品を発売。熱中症への注意が必要になる夏場に向けて、デジタル温湿度表示機能を新たに搭載した。
マクセルは、コロナ禍による除菌・消臭関連市場の拡大を商機と捉え、独自製品の開発などで中長期的に事業を拡大させる考えを示す。20年度の事業でも、除菌消臭器などの健康関連がコンシューマー事業のけん引役を果たしており、この流れは今後も続くとみる。
岩崎電気も、10年以上にわたって販売してきた空気循環式紫外線清浄機「エアーリア」シリーズの引き合いが急増している。
エアーリアは、取り込んだ空気を紫外線ランプで除菌する装置だ。昨年5月に小型タイプをラインアップに追加して以降、商業施設などの大空間で使える大型タイプや、オゾン発生装置も備えて表面除菌にも対応した製品など、開発のスピードを加速して製品を展開。業務用途を中心に需要を獲得してきた。業務用製品であるが、個人ユースにも導入が広がるなど、フィルターを搭載しないことによるメンテナンス性の高さと、紫外線の除菌力を生かして販売を伸ばしている。
定着しつつある除菌ニーズ
昨年度に大幅な伸びを示した空気清浄機や除菌装置。家庭用、業務用ともに「入るところにはある程度入った」(除菌装置メーカー幹部)という声も聞こえだしている。ただ、人が集まる空間には、空気清浄機や除菌装置など空質を改善する機器を設置することが、当たり前に求められるようになった。
家庭用では部屋ごとに空気清浄機を導入する機運がこれまで以上に高まり、業務用途では導入していることが安心感を与えるようにもなった。飲食店や医療機関などは最たるものだ。
除菌装置は据え置き型の製品ばかりでなく、組み込み型の提案も市場では活発になっている。例えば、照明メーカーが紫外線ランプによる除菌ノウハウを生かして、天井組み込み型の除菌装置を発売するなど、強みを生かした展開を進めている。
さまざまな感染リスクを考慮すると、人が触れる場所や床面、空気中と、それぞれの用途で除菌装置に求められる機能・性能も少しずつ異なってくる。これまでは単一製品でユーザーを十分満足させられていたものが、使い方や用途に応じた製品が必要になってきた。
ただ、やみくもにラインアップを増やせばいいというものではない。除菌ニーズが定着し、用途の広がりは間違いなくあるが、コロナの収束と合わせて、需要もある程度は落ち着くはず。とはいえ、世界的なパンデミックの脅威は人々の脳裏に焼き付いているため、コロナ以前の需要には戻らないだろう。
ワクチン接種が本格化する中、空気清浄機や除菌装置を展開する企業には、アフターコロナを視野に入れた戦略立案が今後の鍵を握りそうだ。