2021.07.02 【家電総合特集】ニューノーマルウイルス抑制・除菌に注目、内食需要増加にも対応
内食需要で、さまざまな調理家電の販売が押し上げられている
新型コロナの流行がもたらした未曽有のパンデミックは、生活に密着する家電の必要性を改めて認識させるとともに、さまざまな製品の需要を底上げする契機となった。ニューノーマル(新しい日常)の中で需要が定着し始めた製品もあり、それらは今年度も引き続き力強い需要が期待できそうだ。
コロナ禍で急拡大した需要の一つは除菌関連だ。衛生・清潔意識の高まりから空気清浄機の需要も拡大したが、特にウイルス抑制や除菌に効果を発揮する次亜塩素酸やオゾン、紫外線を使用した機器の注目度が急増した。
空気清浄機であれば、シャープやパナソニック、ダイキン工業など大手家電が強みを発揮し、実際に製品も売れている。一方で、市場の拡大に合わせて新規参入組も多数現れるとともに、ウイルス抑制に効果的な製品を細々と展開していたような異業種の製品が、家庭にも入り始めている。
例えば、照明メーカーである岩崎電気の空気循環式紫外線清浄機「エアーリア」。業務用として展開しているが、販売代理店がネットでも販売していることから、個人で購入し、家庭で使用するケースも出てきた。
医療機器メーカーの日機装は、医療施設をターゲットに開発した深紫外線LED搭載の空間除菌消臭装置「エアロピュア」が、設置しやすい8畳相当の小型な本体もプラスに働き、家庭用としても売れている。6月からは家庭への本格的な展開を目指し、ドラッグストアでの販売も開始した。
空気清浄機を含むこうした除菌関連機器は、コロナ禍を経てこれからの生活に欠かせない存在として定着している。用途の広がりを考慮すると、需要拡大の余地は十分残されている。
さらに、在宅時間が増えたことで、内食を楽しむ傾向が一層進んだ。定着した在宅勤務は、コロナ収束後も継続するはずだ。そうなると、内食を楽しむ傾向は続くため、主力のオーブンレンジや炊飯器に限らず、多彩な調理家電の需要の押し上げにつながる。
昨年需要が盛り上がったホットプレートやたこ焼き器は、昨年に比べると需要はさすがに落ち着いている。日本電機工業会(JEMA)の統計では、ホットプレートは4~5月累計で17万8000台と前年を2桁以上割り込んでいる。ただ、流通側は「従来に比べると需要は底上げされた」とし、コロナ前よりも売れるようになったと見ている。
5月単月で電子レンジの出荷台数が過去最高を記録するなど、内食の増加を受けた需要の盛り上がりは続いている。炭酸水メーカーや電気圧力鍋、ホットサンドメーカーなど、家事負担の軽減や内食を楽しむための調理家電は、普及率が決して高いわけではない。リーズナブルな製品も多いため、気軽に購入する層が増えている。
メーカーの製品開発も、ニューノーマルに合わせた機能の実装が目立ってきた。
パナソニックは、癖の付いた長いひげも簡単にそれる電気シェーバー「ラムダッシュ」を6月に発売した。同社の調査によると、コロナ禍で在宅勤務が広がったことも関係し、ひげそりの頻度が減った人は約75%に達したという。また、コロナ前に比べて3日に1回程度の人が約2倍、2日に1回程度が約1・4倍に増えている。
ひげをそる頻度が減ると当然長くなる。ひげは癖も付きやすいため、長くなるとそりにくくなりがちだ。そうしたひげそり頻度の変化に応えるため、短いひげから長いひげまで簡単にそれる製品を開発した形だ。
炊飯器でも内食増加を受けた対応を進めている。三菱電機は6月、「冷凍用モード」を搭載した炊飯器の新製品を発売した。炊飯したご飯を冷凍保存するのに最適なモードで、吸水に時間をかけお米の芯まで水を吸わせる。沸騰工程でもゆっくり火を入れていくことで甘さを引き出すような加熱制御を行っている。
コロナ禍で増えた内食への対応とともに、あらかじめご飯を冷凍保存することで家事負担の軽減にもつなげる狙いがある。通常の炊き上げよりも冷凍保存に適した炊き上げとすることで、家事負担を軽減しつつ、食事の満足度を高めることにつなげている。
開発面では、ハードを抜本的に見直すというよりも、ソフトウエアの変更で新機能を実装する傾向がこれまで以上に強まっている印象だ。ハード的な進化は高いレベルが既に実現されているからだ。各社ともそのハード基盤を生かし、ソフト面でニーズに合わせた機能を実装したり、サービスとの連携を模索したりしている。それにより、変化したニーズを捉え、付加価値を提案しようとしている。
コロナ禍が示したように、社会環境は急激に変化することもある。それに素早く対応することが家電各社には求められており、ニューノーマルでは、ハードはそのままに中身を変えられるIoT技術の重要性が、一層高まったといえよう。