2021.07.08 商業・産業印刷向け新製品相次ぐ流通やアパレルなど新市場開拓

多彩な用途に広がりを見せるデジタル印刷

成長領域の大判プリンター市場成長領域の大判プリンター市場

 商業・産業印刷市場に向けた新製品の発表やソリューション提案が相次いでいる。コロナ禍で市場環境は依然不透明なものの、印刷市場もデジタル化が加速。メーカー各社は成長領域と捉えて取り組みを強化し、ソリューション連携による印刷工程の自動化、省力化、アパレルなど新市場の開拓を急ぐ。

 セイコーエプソンは先ごろ、長野県塩尻市の広丘事業所でフラッグシップモデルとなる大判インクジェットプリンターの新商品発表会を開催、同時にオンラインでも行った。商業・産業向け大判インクジェットプリンター「SureColor」シリーズの新商品として、6色インクを搭載し、高画質と高速プリントを両立した76インチ対応の昇華転写プリンター「SC-F10050H」を14日に、コンパクト性など使いやすさと高生産性・高画質を追求した6色水性顔料インク搭載プリンター「SC-T7750D/SC-P8550D」を9月に発売する。

 流通・小売り、アミューズメント業界、アパレル、サイン業界向けの戦略モデルとして普及を図る。

 同社は新経営ビジョン「Epson 25 Renewed」で商業・産業分野を成長領域に位置付け、4月にプリンティングソリューションズ事業本部を設立した。吉田潤一執行役員同事業本部長は「オフィスやホームとともに商業・産業印刷を成長事業として強化する。インクジェットの総合メーカーとして、さまざまなパートナーと連携し、お客さまの課題を解決していく」と強調。

 また、五十嵐人志執行役員同副事業本部長は「インクジェット技術とデジタルソリューションを組み合わせプラットフォーム化を推進していく」と話す。新製品も、「印刷現場の稼働状況をスマホなど出先から把握できる」(五十嵐執行役員)クラウドソリューション「PORT」と連携、作業の効率化を実現する。PORTは、1000社2000台以上の機器に採用されている。

 富士ゼロックスから社名を変更した富士フイルムビジネスイノベーションは、新たにプロダクション(商業印刷)関連の新ブランド「Revoria(レヴォリア)」を立ち上げた。第1弾として、ハイエンド向けのプロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」など新モデルを、20日から日本を含むアジア・パシフィック地域で順次発売する。

 グラフィックコミュニケーションサービス事業本部業務部の大谷隆司部長は「Revoriaブランドをプロダクションプリンター、関連するプリントサーバーから印刷ワークフローソフトウエアまで含めたプロダクションプリンティングソリューションとして提供していく」と説明する。

 あす9日まで、富士フイルムグループが提供する印刷関連の商品やサービス、ソリューションを一堂に集めたオンラインイベントを開催中。新ブランドや同社の戦略を紹介している。

 リコーは、大量生産ライン内での印刷業務効率向上と省資源化による環境負荷の低減を目指す生産工程向け高速印刷ソリューション「RICOH FC-LDA Printer 500」を6月23日に投入した。同社が開発した高速レーザーマーカーとほぼ無色透明なサーマルメディアを組み合わせ、大量生産ラインで高速搬送されているフィルムやラベルといった包装材に、最大毎分300メートルの速度で個別に異なる情報を印字できる。

 「必要な情報を必要なときに必要なだけ印刷するオンデマンドプリンティングにより、業務効率の向上に貢献する。箱や袋などさまざまな包装材料に活用していく」(同社)計画だ。

 キヤノンは人工知能(AI)を使い、画像調整を自動化する検品工程の自動化ユニットを新たに発売。コニカミノルタはワークフローの自動化・効率化・スキルレスを実現する製品の投入やソリューションに注力する。「印刷会社のワークフローを変革させ、デジタル印刷ならではの省力化、スキルレス、リモート化を推進していく」(同社)。