2021.07.16 【電子部品技術総合特集】中長期のイノベーションに焦点カーボンニュートラルなど重視

 電子部品メーカー各社は、IT・エレクトロニクス技術の高度化がもたらす中長期のイノベーションに照準を合わせた研究開発に力を注いでいる。現在のエレクトロニクス市場は、「AI(人工知能)」「ビッグデータ」「IoT」「5G(第5世代移動通信規格)」といった新たな技術潮流により大きな変革期を迎えつつあり、昨今のコロナ禍もこれらのデジタル変革の動きを加速させている。さらに、世界的な「脱炭素化」へのニーズが強まり、カーボンニュートラルの実現のためのイノベーションも強く求められている。各社はこれらの変化を見据え、コア技術に磨きをかけるとともに、中長期視点のR&Dを一段と重視し、社会課題に対する技術ソリューションに全力を注ぐ。

 わが国の電子部品産業は、IT・エレクトロニクス産業や自動車産業、各種インフラ産業などの発展を支える基盤産業として、国内外で高く評価されている。

 電子部品メーカー各社の成長の原動力は、イノベーションの源泉である技術開発活動。各社は既存顧客の課題解決に向けた技術開発に取り組むとともに、将来の技術変革や社会ニーズの変化などに基づく中長期の開発ロードマップを策定。同ロードマップに沿って、必要な要素技術の開発やタイムリーな新製品開発を推し進めている。

 電子部品のアプリケーション別開発戦略では、近年は「自動車重視」の姿勢が年々強まっている。電子部品各社は、「CASE」「MaaS」などをメガトレンドとする自動車市場の変革にフォーカスし、次世代モビリティーに対するR&Dに全力を挙げている。

 通信分野では、5Gの本格化に照準を合わせ、5G端末や5G基地局向けの高周波/ミリ波対応デバイスの開発が活発。同時に、5Gが引き起こすとされるさまざまな産業分野でのイノベーションに対応するための技術開発にも力を注いでいる。さらに、2030年ごろの立ち上がりが見込まれる次世代の6G(第6世代移動通信規格)をにらんだ技術マーケティング活動なども始まっている。

 産業機器関連では、社会全体の自動化ニーズが強まる中で、FA・制御技術の高度化に対応する小型で高精度な産機用部品の技術開発が進む。半導体の微細化進展や、データ通信の容量増大に対応するための次世代高速大容量デバイスや次世代パワーデバイス開発なども加速している。

 医療機器/ヘルスケア分野を次期重点分野に掲げる電子部品メーカーも多く、低侵襲医療のための先端デバイス開発やソリューション提案などが活発化している。

 最近は、世界的なメガトレンドとして、「世界人口の爆発的増加」「先進国での高齢化」「都市化の進展」などが指摘される中で、「SDGs」への取り組みや「ESG経営」が一段と重視されている。中でも地球環境問題は世界共通の重要課題として意識され、「カーボンニュートラル達成」が人類共通の重要テーマに掲げられている。

 特に20年以降、先進国を中心に多くの国々が、カーボンニュートラルの達成目標時期を「2050年」と定めた方針を発表している。

 さらに、今年4月に米国主催でオンライン形式で開催された気候変動サミットでは、日本を含む多くの国が「温暖化ガス削減目標」を引き上げ、地球温暖化対策への積極姿勢を強めている。

 電子部品各社はこうした動きに対応し、環境保全のための取り組みを一層重視。事業活動におけるCO2削減への取り組みを加速するとともに、社会全体の脱炭素化に貢献する新製品開発や新技術開発に注力することで、社会課題解決への貢献を目指す。

 コロナ禍によるデジタルシフト加速は、IT・エレクトロニクス技術の進化のスピードを速め、さまざまな技術革新を引き起こしつつある。電子部品各社は、こうした変化の先にある「ニューノーマル社会」に照準を合わせ、積極的なR&D活動を展開する。

 外部企業とのアライアンス戦略やオープンイノベーション戦略、M&A(企業の合併・買収)への取り組みも一段と活発化している。