2021.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】〝DX〟キーワードに課題解決支援

ソリューションプロバイダー各社はコロナ禍での新たな働き方の提案を加速している(写真は内田洋行)

 ソリューションプロバイダー各社は2021年後半戦に向け、「デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル改革)」をキーワードに企業や官公庁の課題解決を支援していく。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、多くの企業がコロナ禍での新しい働き方を模索している。在宅勤務などのリモートワークが定着するとともに、今まで以上に省力化や自動化などを検討する動きが活発で、デジタル技術の活用への関心が高い。電波新聞社が行った主要ソリューションプロバイダー各社トップインタビューでは、クラウドなど最新のデジタル技術の活用が当たり前になり、DX関連の事業が総じて堅調だと口をそろえる。後半はDX実践段階に入ってくるとみられる。

 クラウドや人工知能(AI)、IoTといったデジタル技術を活用し付加価値を創出するDXが当たり前に語られるようになってきた。コロナ禍で市場環境に不透明感はあるものの、デジタル関連への投資意欲は旺盛だ。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が行った「企業IT動向調査2021」によると、ユーザー企業の過半数が売り上げ減に直面しているもののIT投資は堅調で、デジタル化への対応や基幹システム刷新に向けた投資を進める動きが顕著になっていることが明らかになった。

 依然として働き方改革への需要が高く、迅速に業績を把握したり情報共有したりする要望も高い。ビジネスプロセス変革を課題に挙げているユーザー企業も一気に増えてきていることも分かった。

 こうしたユーザー企業側の動きもあり、ソリューションプロバイダー各社もデジタル化や働き方改革を支援するソリューション展開にかじを切っているところが多い。ソリューションプロバイダー自身もデジタル化が急務になっているところが多く、社内のDX化を進めながら外販する動きもみられる。

 オフィス丸ごと支援を提唱してきた大塚商会はテレワークを実現するサービスを軸にデジタル化の提案を加速。AIを活用した社内実践成果を外販する取り組みも始めた。リコージャパンはDX委員会を設置し社内DXの実践で顧客への価値向上に取り組む。NECフィールディングは数年来社内DXに取り組み、AIを活用した自動化や省力化の取り組みを進めてきた。ここで培ったノウハウを顧客に展開する取り組みも始めようとしている。

 働き方改革への取り組みも進む。コロナ禍で在宅勤務が浸透する中、いかにテレワークを効果的に進めていくかが焦点になってきた。特にコミュニケーション不足も課題になっている。日立ソリューションズ・クリエイトはマイクロソフトのコミュニケーションツール「チームズ」を活用した仮想オフィスの仕組みを開発し、社内実践をした。全社展開したのちに外販などに向けた検討もしていくという。

 いち早く「働き方変革」を提唱してきた内田洋行も在宅勤務とオフィス勤務とを柔軟に連携して働けるICT基盤を開発した。社内での実践を進めるとともに外販もしていく。

 コンタクトセンターを手掛ける富士通コミュニケーションサービスは企業の顧客との接点を改善していくカスタマーエクスペリエンス(CX、顧客経験価値)を高める取り組みを進める中で、AIの利用で価値を向上させる仕組みを開発し活用を始めた。コロナ禍で顧客接点の強化を模索する企業が増える中で精度の高い支援サービスをしていく計画だ。

 デジタル化の鍵となるクラウドサービスは各社が重点的に取り組む。DXを実現していくための基盤がクラウドになっていることも背景にある。NECネクサソリューションズはクラウド関連のサービスが好調に推移しており電子申請などの展開を進めている。

業種クラウド提案

 日立システムズはデータセンターや運用監視センター、コンタクトセンターといったサービス基盤を持つ強みを生かし業種クラウドの提案を加速。導入から保守までワンストップで提案することで幅広い企業の要望に応えようとしている。

 コロナ禍で従来とは違った営業活動も必要になってきた。ソリューションプロバイダー各社も対面営業だけでなくオンラインを活用した営業活動を本格化している。日立ソリューションズは構築してきた顧客サービス基盤を生かしたオンラインによるインサイド(非対面)セールスを強化。非対面で大型案件を獲得する事例も出るなど新たな営業スタイルを確立した。三菱電機ITソリューションズもウェビナーなどを活用した商談に取り組みはじめ、成果を上げつつあるという。

ICT基盤活用が課題

 市場環境をみると、20年はウインドウズ10への更新特需があり、21年前半は政府が主導して進めたGIGAスクールによる学校への端末納入が一気に進むなど、コロナ禍でもICT業界には追い風も吹いた。この先は特需の反動なども見込まれる半面で、整ったICT基盤をどのように活用していくかが課題になりそうだ。

 例えば学校ICTでは、GIGAスクールで導入された端末の利活用の支援が必要になってくるため、ソリューションプロバイダー各社のサービス力が問われるところだ。

 さらに9月にはデジタル庁が発足する。官公庁や自治体のデジタル化の流れも今後進むとみられ、各社は柔軟な対応ができるよう準備を整えている。21年後半は官公庁、民需ともにデジタルをより前面に出した取り組みが本格化してくる。