2021.09.22 【関西エレクトロニクス産業特集】ローカル5G関西地区でSub 6帯利用拡大

Sub 6帯を導入のサミットスチール大阪工場

 地域限定の高速通信規格「ローカル5G」の産業分野への利用が拡大している。

 ローカル5Gは施設や工場など特定のエリアでデータのやり取りを行うためセキュリティー面で有利なこと、電波干渉がないなどが評価されている。特に総務省が昨年12月、ローカル5Gで使用する周波数帯域を「Sub 6(サブシックス)」として新たに追加したことで使い勝手が良くなり企業からのニーズが高まってきた。

 ローカル5Gで使用できる周波数帯はミリ波帯の28.2ギガ~28.3ギガヘルツ。しかし総務省は昨年末に4.6ギガ~4.9ギガヘルツ帯と28.3ギガ~29.1ギガヘルツ帯をSub 6として新たに使用可能にした。

 Sub 6は、ミリ波帯に比べ遮へい物があっても電波が回り込み、広範に電波が届くという特性がある。しかも外部のネットワークと切り離して使用のためセキュリティーを高められることから多くの企業が免許を取得、もしくは申請するようになった。

 Sub 6によるローカル5Gの免許付与は近畿地方でも増えている。総務省近畿総合通信局によると、現在管内で既に9件のSub 6帯ローカル5G無線局が実用局として運用されている。

 この他にFCNT、オプテージ、阪神ケーブルエンジニアリング、京都大学がSub 6帯で実証実験中だ。

 ローカル5Gはこれまでのところ製造業を中心とした活用が多い。日本は元来製造業が強く、今後も工場での利用が増えるとみられるが、工場に加え工事現場や医療分野などでの実証実験が関西で目立っている。

 和歌山、滋賀、三重の各県でケーブルテレビ事業を展開するZTVは2020年10月、近畿総通局からミリ波帯でローカル5Gの免許を取得、交通量の多い場所や雪の多い地域の情報を4K映像でリアルタイムに配信するためにローカル5Gを利用している。

 住友商事系の製鉄会社サミットスチールは、大阪工場(大阪市此花区)でSub 6帯により目視検査の自動化や遠隔からの品質確認を4Kカメラで行っている。これまでの4GやWi-Fiによる検査では細かいキズを画像で検査することは難しかったという。

 住友商事は「大阪ひかりの森のプロジェクト」(大阪市此花区)でSub 6帯ローカル5G利用の太陽光発電所の保守管理を効率的に実施中だ。

 NTT西日本は現在、大阪市都島区に建設中の新本社ビルのエレベータ組み立て工事現場に4KカメラとSub 6帯ローカル5Gのシステムを設置、危険エリア内への作業員の立ち入り検知など、安全な建設現場をめざしている。

 関西電力系のオプテージは大阪市内の本社でSub 6の免許を取得したほか、関西電力姫路第二発電所の保守とインフラ監視にミリ波帯でローカル5Gを利用。

 導入には初期コストがかかるが、総務省では送受信装置やアンテナ、コア設備、光ファイバーなどの設備を対象に税制の優遇制度を設けている。