2021.09.29 【ASEAN特集】新型コロナASEANの感染拡大防止対応 バブル/シール方式で対応

ASEANでは国民への厳しい行動制限が続いている(マニラ首都圏のマカティー地区)

 ASEAN地域では、新型コロナウイルスデルタ株の感染拡大に伴い、今年7月以降、各国でロックダウンや厳しい外出制限などの措置が講じられている。それでも、今月後半に入り、一部で規制を緩和する動きが見られ始めている。現地進出の日系電子部品工場などでは、安全確保に十分配慮しつつ、現地での事業活動の継続に努めている。

 ASEANでは、今年の6、7月ごろから新型コロナウイルスデルタ株の感染拡大が深刻化。国によっては、一都市のみで、連日1万人規模のコロナウイルス感染者が発生しているケースもある。一方で、新型コロナワクチンの接種のスピードは、欧米や東アジア地域に比較すると総じて遅れており、中には国民全体の接種率が1割に満たないというケースもある。

 このため、多くの国では今年7月以降、ロックダウンおよび事実上のロックダウン措置の実施、外出制限や移動制限の厳格化などが講じられた。国によっては、工場でのクラスター発生防止対策として、「バブル方式」や「シール方式」などが実施されている。バブル方式は、工場外に従業員が居住している場合に、従業員をバスなどで工場まで運ぶといった方法で感染を防止するもの。シール方式は、工場内に従業員の宿泊施設を設ける手法となる。

 ASEAN全地域の中でも感染拡大が厳しい状況にあるベトナム南部のホーチミン市では、今年7月9日からロックダウンが行われ、市民への厳しい外出禁止措置が取られている。8月からは軍隊による監視強化も実施。このため、現地進出の日系電子部品メーカーなどでは、工場に従業員の宿泊施設を作り、泊まり込みでの作業を行うというシール方式での工場運営を余儀なくされているケースが多い。

 ホーチミン市での不要不急の外出禁止措置は、当初は9月15日までに解除される予定だったが、足元の感染状況などを考慮し、現在は30日まで延長されている。

 マレーシアは、今年6月1日から実施されていたクアラルンプールやセランゴール州などでのロックダウンを10日に解除した。同国では、コロナ感染拡大が深刻なクアラルンプール地区やジョホール地区などで、工場の操業度を5割以下に抑制するなどの規制が取られていたが、現在は緩和の方向に向かっている。そのため、工場従業員全体のワクチン接種率に合わせて、操業度の上限を引き上げるなどの措置が取られている。

 現在の指標では、ワクチン接種率が70~80%に達すると、工場操業度の上限は80%となり、ワクチン接種率が8割を超えると、100%稼働が認められる。

 これにより、マレーシア進出の日系部品工場では、今月中にはフル操業となる見通しの工場も少なくない。マレーシアは、ASEAN諸国と比較すると、ワクチン接種率が速いスピードで進んでいる。成人に占めるワクチン接種完了者の比率は、5割を超えたとされる。

 タイでも、コロナ感染者の多いバンコク周辺地域などを中心に、8月まで、事実上のロックダウン措置が取られ、厳しい行動制限が課せられていた。1日からバンコクの行動制限は一部解除されたが、夜間外出禁止などの措置はその後も継続している。

 フィリピンも長期にわたるロックダウン措置が継続しており、不要不急の外出が制限されている。

 それでもASEAN全体として見ると、デルタ株の感染は今年8月にピークを迎え、今月以降はやや状況が改善傾向。各国の行動制限措置も今後は徐々に緩和されていくことが予想されている。

 また、ASEANでの入国や帰国では、多くの国が最大14日程度の自主隔離期間を設けているが、感染状況によって、日本人でもASEANへの入国許可自体が下りないケースも発生している。