ニューノーマル（新しい日常）な生活様式が定着し、人々の暮らしに大きな変化があり、食生活においても在宅時間が伸び、外食を控えたことで内食化が進んでいる。このため、炊飯器を含め2020年度の調理家電商品群は全般的に好調な推移を示した。

　家庭で料理をする機会が増えることで、より時短・家事省力化につながる特長を持った調理家電商品群への関心も高まる。

　調理家電の主力商品の一つが炊飯器となるが、昨年度、ほかの調理家電と比べると大きな伸びはなかったものの、インバウンド需要が減少するなど厳しい市場環境にある中で、20年度は約557万台と大きな出荷台数となった（日本電機工業会まとめ）。

　21年度に入ってからは、4月単月の出荷台数が前年同月比13.6％増と2桁伸長してからはマイナスの出荷が続いているが、おいしさ志向を背景に、高級IHジャー炊飯器への高い評価は継続している。

　家庭で食事をする機会が増えたことで、よりご飯のおいしさに対するニーズは強まり、各社高級ゾーンの商品戦略を強めている。

　IHジャー炊飯器は、米をしっかりと炊き上げる火力が高く、中でも高級ゾーンでの炊飯技術はより高度化しており、昔ながらのかまど炊きを目指す炊飯プログラムの開発、高火力で炊ける内釜やIH熱源の進化など、各社独自の技術で、米の甘み、うま味を引き出す炊飯方式の開発で独自色を打ち出している。

　IoT機能搭載の炊飯器のラインアップも増えている。IoT対応炊飯器は現在、タイガー魔法瓶、パナソニック、三菱電機が展開している。

　調理性能などハード本体の進化と合わせ、IoT化により炊飯プログラムの追加、米の残量通知で購入促進を促す、あるいはアプリケーションから米を再注文するなど便利な使い方ができる。

　アプリを家族と連動し、相手のジャー炊飯器の利用頻度や炊飯の状況を把握して、離れた家族の見守り機能として活用するなど、炊飯器使用の幅を広げる価値創造への取り組みも見られる。

　炊飯にとどまらず、調理機能も充実させるなど炊飯器本体の機能も進化、幅広いニーズに対応できる商品戦略が加速している。

パナソニックの主力製品

「ライス＆クッカー」SR-UNX101
炊飯と調理の1台2役

　パナソニックは、一人一人に最適な機能を提供する「マイスペック」シリーズとして、炊飯と調理1台2役の新たなIoT対応調理器「ライス＆クッカー」SR-UNX101を9月から発売した。

　「キッチンポケット」アプリケーションとの連携によって、本体に登録する炊飯コースをカスタマイズでき、炊飯以外の調理機能も拡充している。

　フルスペックではなく、一人一人に〝ちょうどいい価値〟を提供する新コンセプトのマイスペックシリーズは、本体はシンプルなデザインと多機能ではなく必要となる基本機能に抑え、購入した後から機能やコンテンツを常に更新・提供して、スペックを自分仕様にカスタマイズすることができる。ライフスタイルの多様化、食に対する価値観など顧客それぞれのニーズに合わせた価値を提供していく。

　ライス＆クッカーは、同社の従来の炊飯器のように本体に搭載された多数のコースの中から選択して使用するのではなく、アプリを通じてよく使用する3種類の炊飯コースのみを選んで本体に登録することで、シンプルな操作性・デザインを実現する。

　ほかのコースはスマートフォンのアプリから簡単に入れ替えられる。米の種類や食感の好みなどにより、25通りの炊飯コースを搭載する。

「ほったらかし調理」に対応

　また、ほったらかし調理のニーズが拡大しており、炊飯器を使用したレシピも多数存在しており、炊飯器に欲しい付加機能として調理機能が上位に挙がる中、スープや煮込み料理、ケーキなどに対応する調理機能を搭載した。

　食材をセットし、アプリからレシピを送信するだけで、食材の温度変化を捉え、適切な時間・火力で調理する。

　調理レシピは同製品発売時の10種類に加え、食のセレクトショップ「DEAN ＆ DELUCA」監修メニューを含む新しいレシピを10月以降、随時追加配信する予定だ。

　さらに、アプリを通じて、その年の米の出来栄えに応じて炊き方を更新したり、調理できるレシピが新しく追加されるなど、購入後も機能を進化させることができる。

　本体には本格的な炊飯性能を搭載し、強力な泡の熱対流で米をおどらせ、一粒一粒を均一に加熱する「おどり炊き（大火力IH）」により、味わい豊かな銀シャリが炊ける。

　まとめ炊きにうれしい「冷凍用ごはんコース」も搭載し、高温浸漬でコメの中までしっかり吸水させ、水分の分布を内外均等にすることで、解凍後のべたつきを防ぐ。