2021.10.26 「ネット利用の高齢者=健康」?研究者の大規模調査で示唆
インターネットを使っている人と使わない人。特に高齢者では健康などに違いはあるのか。自治体との共同研究などに取り組む日本老年学的評価研究機構(JAGES機構)が発表した調査では、ネットが外部との交流の一助になり、心身の健康の上でプラスに働いている可能性が示唆された。巣ごもりで増えているソーシャルメディアなどは、「引きこもりや中毒といった一部の問題もあり得るが、それらを除けば、高齢者のネット利用は総じて、社会との接点につながり、健康の上でプラスになっている可能性がある」と研究者らは指摘している。
11自治体で20年末~21年初めにかけて、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を調べ、分析した。コロナ流行以前から活動頻度が月1回以上である人を対象にし、コロナ流行期に活動頻度が月1回未満になった場合を「減少」、月1回以上の場合を「維持」と分類した。
それによると、コロナ流行の前後での活動頻度の変化は、趣味やサークル、ボランティアなどほとんどの活動で、「減少した」人と「維持した」人とに、ほぼ二分された。
そこで、活動が「減少した」人と「維持した」人を比較すると、要支援・要介護である相対リスクや、フレイルである相対リスク、「うつ」である相対リスクとも、活動が「減少した」人が高かった。
ここまでは想定される通りだが、では、ネットを使ったコミュニケーションの変化についてもどうかを見た。すると、SNSなどの利用が「増えた人」は、「増えていない」人に比べ、「うつ」である相対リスクや、「孤立を感じる」相対リスクが低かった。
ほかの調査では、ネットを定期的に利用していることが、健康やウェルビーイングに良い関連があるという分析結果も出た。うつ病のリスクが低いことや、主観的健康感が高い状態であること、日常生活動作(ADL)の能力が高いこと、社会的関係が良好であることなどが挙げられるという。
これらの関連は、所得や教育水準など社会経済的要因の影響を調整しても、認められた。つまり、こうした要因にかかわらず、ネット利用を効果的にできるようになると、健康を維持する要因になり得るという示唆が得られた。また、ネット利用者は非利用者よりも、社会的に活動的であることも分かった。
そうなると、「ネット利用の多い人の健康状態が良いとしても、それは所得や教育水準の方が要因であって、ネット利用が要因ではない」ということでもなさそう。高齢者のネット利用について関心が改めて持たれそうだ。
(27日付の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します。)