2021.11.12 【ルームエアコン特集】買い替え・買い増し需要が堅調、寒冷地域で急速に普及
ルームエアコンは、年末暖房商戦において、主力商品の一つとなる。エアコン暖房能力の向上で、今では冬場のメインの暖房機として定着しており、夏商戦に続き、冬場も商品提案に追い風が吹く。近年は寒冷地域への普及も加速しており、寒冷地仕様の商品開発も活発だ。各社から新製品も投入され、付加価値の高いビジネスを深めるチャンスでもある。
ルームエアコン市場は、ここ数年、買い替え、買い増し需要を中心として高水準な需要が続いており、2021年度も引き続き堅調に推移すると見込まれている。
昨年度の需要は、過去最高となる初の1000万台超えの出荷台数を記録した。今期は、さすがに昨年度の実績を上回ることは難しいものの、依然として900万台以上の高水準は続くと見られている。
ルームエアコンは17年度以降、毎年900万台を上回る高水準な出荷が続いており、昨年度より規模は減るものの、930万~940万台程度の需要が見込めるという。
買い替え、買い増し需要は、安定して推移すると見られ、ルームエアコンの暖房能力の向上を背景に、寒冷地域への普及が急速に進んでいることもあり、全体として高水準の需要はあるとされている。
高まる室内の空気質への関心
コロナ禍において、ルームエアコンは清潔や快適、省エネといった側面で、最新モデルへの関心を強め、買い替え需要や買い増し需要が顕在化した。
パナソニックによると、在宅時間の増加によりエアコンの使用にも変化が生じ、「エオリア アプリ」の使用ログデータ分析によると、エアコン1台当たりの平均稼働時間は19年度と比べ、20年度は約247時間増加したことが分かったという。
エアコンの使用時間増加は、まず省エネへの関心を高めることになり、それが最新モデルへ「買い替えることでの省エネ」につながったともいえる。
併せて、在宅時間が伸びると気になるのは室内の空気の質、清潔性、快適性だ。ダイキン工業は11月9日(いい空気=換気の日)に合わせ、「現代人の空気感調査」を公表した。
それによると、在宅時間の増加で約7割が室内空気の「息苦しさ」「よどみ」を感じるという結果になり、その対策としてはもちろん窓開け、換気がトップに上るものの、空気を敏感に感じるユーザーは多いことが分かる。
また、室内空気がテレワーク時のパフォーマンスに影響を与えるかとの問いには92.5%が「影響する」(円グラフ参照)と答え、新しい生活様式における室内空気が与える影響は大きいと感じている。
さらに空気のよどみを感じると同時に、「快適な温度の維持・調整」(68.6%)、「快適な湿度の維持・調整」(62.5%)と、快適性に直接関わる課題もより感じる結果となっている(棒グラフ参照)。
エアコンにとって、快適な温度の調整はメインの機能であるが、快適な湿度の調整についても重要な機能となる。特に在宅時間が伸びると室内の湿度も上昇傾向にあり、高温多湿な日本では、年々降雨日数が増加し、全体的に湿度も上昇傾向にあるという。
このためメーカー各社では、湿度コントロール技術の進化に力を入れており、早くからダイキン工業では「うるる加湿」「さらら除湿」機能で温湿度調整ができる点を差別化として業界をけん引してきた。最新モデル「うるさらX」では、給気・排気換気機能の搭載で、きれいな外気を取り込みつつ最適な湿度を実現する。
パナソニックも、最新の「エオリア」LXシリーズで、室外機に業界初「高分子収着材」を搭載した。「換気・加湿・新除湿」機能で清潔性、快適性を実現するなど、温度にとどまらず、湿度に着目した機能進化に力を入れている。
寒冷地エアコンの開発も加速
近年、エアコン市場の底上げに貢献するのは、寒冷地域でのエアコン普及だ。厳寒でもしっかりとした暖房性能を出せるようになって、クリーンで快適な暖房を実現することから年々普及が高まり、各社は寒冷地エアコンの開発に全力を挙げている。
富士通ゼネラルは、ノクリア史上最強の暖房能力を実現する寒冷地向け「ゴク暖 ノクリア」ZNシリーズ(全6機種)を11月6日から発売した。
霜取り運転の時間を従来製品より33%短縮するほか、「ウイルカット・フィルター」「熱交換器加熱除菌」や、電気集じん方式「プラズマ空清」搭載など清潔性もさらに進化させている。
さらなるエアコンの進化
各社の最新フラッグシップモデルについては、フィルターの自動清掃機能や熱交換器の自動洗浄機能、強力なイオン発生機能による除菌・抗菌機能、空気清浄機能、換気機能など、衛生面に配慮した機能開発が活発だ。
さらに人工知能(AI)やIoT技術、センシング技術を組み合わせた最適な快適、省エネ制御など、昨今のユーザーニーズをくみ取った機能開発に力が入っている。