2022.03.23 岩崎通信機がオシロ、プローブに解析ソフトパワエレ計測をトータルで提供

高分解能オシロ「DS-8000」と高電圧差動プローブ「バンブルビー」(右)、耐温度の電流プローブ「SS-280A-Hシリーズ」(左)を接続した測定場面

 岩崎通信機は、パワーエレクトロニクスを主要ターゲットとして、広帯域・高分解能のオシロスコープを中心に、独自のプローブなど周辺機器を含めたトータルなソリューションの提案に力を入れている。

 新型オシロ「DS-8000」は、一昨年末に発表後、コロナ禍を経て昨年後半から本格的に拡販を進める。パワエレ関係ではDS-8000の持つ「最高周波数帯域1ギガヘルツ、垂直分解能12ビット」というスペックに期待する声が高い。SiC(シリコンカーバイド)や、GaN(窒化ガリウム)といったパワー半導体の高速信号を捉えるため、より広帯域で高速のサンプリング速度を求める計測需要に応える。

 高分解能オシロと組み合わせる多彩なプローブのラインアップが岩通の強みだ。パワエレ分野で行う電圧・電流の計測で、SiCやGaNを使用した高速パワーデバイス向けの電流プローブとしては「SS-680」を前面に押し出す。最高周波数帯域100メガヘルツで最大1万2000Aまで測定可能な競合品はなく、磁気飽和せずに大電流試験が行える。

 高い電流値を測定するには、一般にプローブヘッドの大型化は避けられない。ヘッドが大きいと電気回路間をつなぐ電線のジャンパー線を長く取る必要があるが、その場合、波形が変動する恐れがある。SS-680のヘッドは外径24ミリメートルと小型でジャンパー線が短くて済む利点がある。

 高温での測定ニーズもますます高まる。SS-680のセンサー部の使用温度範囲は最高70度のため、最高周波数は30メガヘルツに落ちるものの150度の高温まで耐えられる「SS-280A-H」との併用を勧める。

 一方、電圧プローブも高周波対応が要求される。差動プローブ「バンブルビー」は周波数帯域400メガヘルツ。自動車関係が主となるSiCや、家電に多いGaNなど高周波回路の計測で広く使われている。最近は、周波数帯域は100メガヘルツだが比較的安価な「SS-320」より、高額でも高周波のバンブルビーの出荷台数が多いという。

 ただ、バンブルビーも動作温度は50度程度にとどまるため、高温での試験では最大155度の耐温度プローブ「PHT312-RO」を提案している。

 こうした耐温度タイプや、高周波仕様をそろえた電圧・電流プローブの幅広い選択肢は、高分解能オシロとともにパワエレ計測を得意とする岩通の特色。今後は恒温槽での加速試験にも耐えられるプローブの需要を見込む。

 DS-8000は、近年の多チャンネル化と高速波形観測の流れを受け最大8チャンネル、最高5ギガサンプリング/秒。最先端パワー半導体のスイッチングロスを効率的かつユーザーライクに解析するオプションソフトをリリースする予定だ。

 動特性を試験するオシロと静特性の評価に使う半導体カーブトレーサー。それにプローブで得た電圧・電流値をオプションソフトで解析するトータルなパワエレソリューションでユーザーへの付加価値を高めていく。