2022.04.27 NIMS 材料の現場、やさしく紹介つくば市 最先端技術も披露
ヤシガニに着想を得た研究の説明(動画サイトから)
「ヤシガニのハサミの機構を参考にしています」「傷のあるダイヤのほうが役に立ちます」。そんなユニークな切り口で、材料研究の最先端を研究者らが紹介する催しを、物質・材料研究機構(NIMS)が24日、開いた。
茨城県つくば市内のキャンパスでの一般公開に合わせ、オンラインで配信。「非常識な『ミカタ』~材料の科学者はこう考えた~」をテーマに、研究の成果を披露した。
現地体験プログラムでは、ガイド付き見学ツアーや体験教室、国際ガラス年を記念した展示などを県内在住者を対象に、人数限定で開催した。
さらに、オンラインでは「ぶらりラボ巡り」と題して、進行役が研究室を回り、そこで軽妙にやりとりをしながら、材料研究の最先端を分かりやすく伝えた。独自の視点で生み出した研究・材料・装置・技術を現場からオンラインで生紹介するのが売り物だ。
たとえば、強靱(きょうじん)なハサミを持ったヤシガニを、軽くて強い構造材料のヒントにしている研究のラボ。進行役の質問に、研究者が、ヤシガニの実際を詳しく知るため沖縄に飛んだ経験などを紹介しつつ、「こうした素材を、デジタル技術、3Dプリンターでつくれるのではないか」といった説明を進めた。
ほかにも、構造色(アモルファス)を生かして、インフラ点検のモニタリングに活用できそうな技術や、全固体電池、量子関連技術などを、ラボから中継して伝えた。水素関連など、企業から多数の引き合いが入っている先端技術も披露された。
また、昼食時に合わせ、料理の紹介にも絡めつつ、五感の官能試験に関連した技術を説明したり、クイズを挟み込んだりと、関心を引く工夫が多数。動画サイトは延べ3万5000人が視聴する人気だった。
オンラインでも質問が寄せられ、その場で回答されるなど、リアルタイム性を生かした企画で進んだ。
NIMSをはじめ研究機関では、こうした形で研究成果を披露し、一般市民だけではなく、産官学の研究者や学生らにアピールする取り組みが進んでいる。その中でもNIMSは公開に積極的で、動画サイトの視聴者も多い。(水戸)