2022.06.14 山口製油所で石油精製停止へ需要減少で続く再編、出光興産
西部石油の山口製油所。カーボンニュートラルに向けた新たな拠点を目指す
石油元売り大手の出光興産は14日、グループの西部石油(東京都千代田区)が運営する山口製油所(山口県山陽小野田市)の石油精製機能を停止する、と発表した。2024年3月をめどに設備を止める。ガソリンなどの需要減少が続く中、跡地は出光が構想する「カーボンニュートラル・トランスフォーメーションセンター」への転換を目指し、新たな活用法を模索する。
出光は西部石油に38%出資する筆頭株主だったが、これまでに他の出資企業などが保有する株式を取得し66・9%まで高めた。今後、さらに取得を進め、可能な限り早く完全子会社化したうえで、西部石油が唯一運営する山口製油所の精製を停止する。
背景には、脱炭素の潮流の加速や、コロナ禍によるライフスタイルの変化などによって「国内の石油製品需要の減少スピードが従前の予想より早まっている」(出光興産)ことがある。グループ製油所の平均稼働率は77%にとどまり、「能力的に余裕が生じている」(同社)現状だ。30年に向けてグループ全体で精製能力が1日当たり30万バレル程度余ることが見込まれている。
地域ごとの需給ギャップや輸出競争力などを勘案し、判断されたのが山口製油所の精製設備の停止だった。だが、同製油所の精製能力は同12万バレル程度だ。
会見した出光興産の丹生谷晋副社長は、今後の再編について「30年に区切った時点でも、まだ能力削減の余地がある。ただ、40年、50年に向けて、さらに需要は減少していくため、それで終わりではない」と語った。一方、「既存製油所の稼働率が向上し、グループ全体の競争力、経済性は向上する」とも指摘した。今回の停止により、単純計算で稼働率は90%程度に高まるという。
山口製油所は、グループでは西日本唯一の施設だった。精製停止後は、施設を西日本に多く持つ元売り最大手のENEOSグループなどと協力。地域ごとで製品を融通し合うことなども検討していくという。
また、跡地について丹生谷副社長は、「広大な敷地と有効なインフラが整っており何とか活用しながら、カーボンニュートラルの実現にふさわしい拠点に変えていきたい」と語った。