2022.08.31 全固体リチウムイオン電池世界初、宇宙で充放電に成功

全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space AS-LiB)のモニターカメラ撮影画像(©JAXA)

全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space AS-LiB)(©JAXA)全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space AS-LiB)(©JAXA)

JAXAと日立造船 ISSで実証実験

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日立造船は、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置した全固体リチウムイオン電池の実証実験を実施、宇宙での充放電に世界で初めて成功した。激しい温度変化にさらされるような地上での各種応用も期待される。

 宇宙では従来、有機電解液のリチウムイオン電池が使われており、省スペース化が求められる小型機器や船外実験装置などでの使用は難しかった。そこで両者は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募の枠組みの下、2016年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を推進していた。

 今回の電池は65×52×2.7ミリメートル、質量25グラム。マイナス40~プラス120度といった、高温や低温の環境に対応する。液体材料を使用していないため液漏れがなく、固体電解質が難燃性のため発火や発煙、破裂などの危険性が極めて低い。また揮発成分を極小化した電池構成で、真空下でも大きく膨張しない。

 温度差が激しく、真空で放射線にさらされるような宇宙環境で利用する設備の小型・軽量化や低消費電力化に寄与できる。

 今後の実証実験では、宇宙環境下での同電池の特性などを評価する次の段階として、基本的充放電特性データと宇宙環境暴露部特有の条件(真空、放射線、微小重力など)による容量劣化推移の評価に必要なデータを取得する予定。

 将来的な用途としては、月面に設置する観測機器や、小型のローバーなどが想定される。さらに大容量化を実現した後には、本格的な大型ローバーなどの宇宙機での使用が期待される。地上での用途では、従来の電池では適用が難しかった高温、低温や、真空環境下にある産業装置、高温滅菌を要する医療機器やそのほか各種機器への展開を検討していく。

 日立造船は全固体電池について、「将来のゲームチェンジャーになり得る次世代電池の大本命」と意欲を示している。