家庭用の自然冷媒（CO₂）ヒートポンプ給湯機「エコキュート」は、東日本大震災による電力不足の一時期を除き、現在に至るまでほぼ出荷が順調に伸びている。カーボンニュートラルの実現に向け、省エネが重要になる中、家庭での給湯分野の効率化に貢献するほか、多発する自然災害に伴う断水時にも生活用水が確保できるといったレジリエンス性まで、暮らしを支える機器として、今後も注目を集めそうだ。

　エコキュートはヒートポンプ技術を活用し、2001年にコロナが世界で初めて商品化した。以降、参入メーカーが増え、給湯の省エネに貢献するシステムとして認知が広がり、22年3月末時点で累計出荷台数が800万台を突破した。

　エコキュートは、再生可能エネルギーである空気中の熱エネルギーを集めて活用する省エネルギー技術「ヒートポンプ」を利用した給湯機。電気だけでお湯を沸かす場合と比べ、大気熱・電気併用で約3分の1の電力消費を実現する。

　家庭で消費するエネルギーの約3分の1を占める「給湯」分野で、大幅なエネルギー消費を抑制できる。

　今では床暖房なども行うことができる多機能機種、省スペース型機種、寒冷地仕様など用途に合わせ、また狭小スペース・寒冷地への設置普及を可能とする多彩な機器開発が進んでいる。

　国が普及に力を入れるZEHにおいて、現状導入される給湯機器の6割以上がエコキュートになっており、高い省エネ性が評価され、将来性の高い機器となっている。

　省エネ性にとどまらず、エコキュートは万一の場合の災害対策においても有効で、停電時にも出湯が可能なほか、断水時の非常用水も利用できる（370リットルでポリタンク約18杯分）など、レジリエンス機能にも優れる。

　併せて、HEMS連携や太陽光発電との連携で、より効果的な賢いエネルギー消費の実現にも貢献でき、幅広い観点でエコキュートの有用性に注目が集まっている。

　政府は50年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、エネルギー基本計画（21年10月改訂）や地球温暖化対策計画、パリ協定に基づく成長戦略の長期ビジョンで、30年までのエコキュートの普及目標を1400万台から1590万台に上積みしており、普及は今後さらに加速がつきそうだ。

パナソニックの主力製品

「おひさまエコキュート」Yシリーズ、レジリエンス機能など充実

　パナソニックは、省エネ性はもとより、快適、耐震性などレジリエンス機能といった、幅広い切り口で同社エコキュートの特長を訴求している。

　最新モデルでは、ミドルモデルとして東京電力エナジーパートナー管内で、太陽光発電を利用する顧客向けに、太陽光自家消費促進型自然冷媒（CO₂）ヒートポンプ給湯機「おひさまエコキュート」Yシリーズ2品番を4月から投入した。

　東京電力エナジーパートナーと電力中央研究所との共同開発商品で、東京電力エナジーパートナーが新しい電気料金プラン「くらし上手」を今年2月から開始したのに合わせ、同プランに対応した。

　主に昼間の太陽光エネルギーを使って沸き上げを行う。天候の悪い日も昼間に沸き上げるが、東京電力エナジーパートナー専用新電気料金プランのくらし上手と組み合わせることで、どの時間帯も同じ料金で利用できる。

　同シリーズは、太陽光発電のエネルギーを有効活用して自家消費を促進し、CO₂排出量を約48％削減、給湯光熱費を約24％抑えられ、より環境と家計にやさしいヒートポンプ給湯機となる。

　さらに、専用スマートフォンアプリ「スマホでおふろ」に対応。壁付けのリモコン（台所リモコン）に無線LANを搭載しており、自宅にインターネット環境があれば、ふろ予約、ふろ自動などの遠隔操作、エラー通知などの各種情報の確認がスマホからできる。

　レジリエンス機能の一つとして「エマージェンシー沸き上げ」も搭載。あらかじめ選択しておいた大雨、大雪、暴風などの災害警報・注意報が発令されている間、タンク内が常にお湯で満水になるよう、自動でお湯の沸き上げを続ける。

　停電時にお湯が使えるだけでなく、断水時も非常用取水栓で湯水を取り出すこともでき、生活用水の確保に役立つ。また、エマージェンシー沸き上げが開始されると、スマホアプリにプッシュ通知で知らせるため、災害情報の認知にも役立つ。

　このほかハイエンドモデルとして、FIT終了に対応した「ソーラーチャージ」機能（太陽光発電余剰電力を有効活用して湧き上げ）の搭載など、より使い勝手を高めたJP／Jシリーズなど4シリーズもそろえる。

　家族一人一人の好みの湯温に合わせる「温浴セレクト」機能や「AIエコナビ」、節水につながる「リズムeシャワープラス」、残り湯の熱を有効活用する「ぬくもりチャージ」といった快適・省エネ機能、4本脚耐震設計をはじめ、非常用取水栓搭載などレジリエンス機能も充実している。