2022.09.29 【電子部品メーカー・商社ASEAN特集】EV誘致に取り組むタイBOI クリーンモビリティーを意識

チャニン副長官

タイの投資政策の中心地EECタイの投資政策の中心地EEC

 タイ政府が電気自動車(EV)メーカーの誘致を強化している。タイはASEANの自動車産業のハブ(拠点)としてEVに活路を見いだそうとしており、EVメーカー誘致や自動車産業のエコシステム構築に向け優遇策を提供しながら自動車産業発展に取り組んでいる。

 タイへの産業誘致を推進しているタイ投資委員会(BOI)のチャニン・カオチャン副長官は本紙の取材に対し、自動車産業はタイの輸出のけん引力になっていると語り、自動車産業の重要性を強調。

 一方で自動車産業はクリーン化がトレンド。このため消費者もクリーンモビリティーを意識している。そこでEVを自国生産し、輸出を増やすために、優遇措置により投資を奨励している、とチャニン副長官。

 同時に自動車が内燃機関(ICE)からEVへと移行しているという国民に対する意識づくりも政府には必要という。

 コロナ禍で多くの国の経済が悪化したが、東南アジア経済は上昇基調に転向。

 タイでは投資増の傾向が出始め、今年上半期の投資申請件数は784件、前年同期より4%増。金額にして2197億バーツ(約8400億円)。

 今年上半期、外国の直接投資(FDI)が最多だったのは台湾の19件、金額で385億バーツ、次いで日本からの169億バーツ、中国155億バーツ。

 上半期は自動車とデジタル分野の投資の伸びが目立ち、特に自動車分野の投資額は212%増の424億バーツという巨額。チャニン副長官は、今年だけでも全投資申請数の約30%はEVと語る。EV用部品の申請も含めればその比率はさらに増大。

 国内でのEV生産で、政府は法人税の減税や非課税といったインセンティブ(優遇措置)を与えて、生産を奨励している。

 50億バーツ以上の投資企業には最高で8年間法人税免除、この企業がさらに所定のR&D費を支出した場合、別途5年間の減税措置の恩恵を受ける。

 こうした税優遇により政府がEV投資の誘致を強化する一方で、消費者のEV購入マインド醸成に向けた動きが出ている。

 2022年と23年はEV1台当たり最大15万バーツ(約60万円)を補助する仕組みがある。

 タイ政府が推進するクリーンモビリティーの最終目標はゼロエミッション車への移行。30年までには全生産台数の30%をEVにする。

 昨年、英国でCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が開催されたが、タイ政府はEV利用の推進だけでなく、化石燃料による発電量を減らし、再生可能エネルギーの使用比率を50%に引き上げるのが政府の目標と、チャニン副長官は話す。

 チャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーンのバンコク東部3県にまたがる経済圏「東部経済回廊(EEC)」はタイの重要な経済戦略。

 EEC地域にEV、医療機器、航空機、ロボットなどのハイテク分野の特定業種の投資を誘致すると同時に「タイランド4.0」を実現、チャニン副長官はタイの最先端産業地域にしたい、との意気込みを示した。(マニラ支局)