2022.10.25 ウェルビーイング社会を創る 挑戦者たちの最前線に迫る ~ 「CEATEC 2022」から

シニア向けスマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」を紹介する日立製作所の担当者=千葉市美浜区の幕張メッセ

「生活習慣改善支援サービス」の利用イメージ=NECのブース「生活習慣改善支援サービス」の利用イメージ=NECのブース

AIによるゴルフスイングの診断を体験している様子=富士通のブースAIによるゴルフスイングの診断を体験している様子=富士通のブース

 先進技術を駆使して実現するSociety5.0(超スマート社会)を見据えて幕張メッセ(千葉市美浜区)で21日まで開かれたIT・エレクトロニクス分野の展示会「CEATEC 2022」は、心身の健康や幸福を表す「ウェルビーイング」を支える多彩なサービスの可能性を示す舞台にもなった。出展各社の競演を振り返ると、健康長寿社会を支えるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進化の方向性が浮かび上がってくる。

シニアの社会参加

 日立製作所のブースに足を運ぶと、「社会参加のすゝめ」というキャッチコピーが目に飛び込んできた。シニア向けスマートフォンアプリの名称だ。

 アプリをダウンロードしたスマホを持ち歩くだけで、GPS(全地球測位システム)や加速度センサーなどの情報を自動的に計測。計測結果は社会参加の関連指標に置き換え、日々どのくらい活動的に過ごしているかをレポートやグラフで確認できるようにする。

 シニアの社会参加を促して要介護認定リスクを抑えることで例えば、保険加入者の生活の質向上や保険事業者の収益拡大の両面に貢献できる。

 具体的には、保険加入者の社会参加への積極性が高いほどリーズナブルな保険料を実現するといった展開にアプリを生かせる。日立金融システム第四本部の担当者は「官民の多様なパートナーと協創し、アプリを使い続けるシニアを増やしたい」と強調した。

生活習慣を改善

 住民が未来の自分をイメージしながら生活習慣の改善に取り組めるよう支援する――。そんな生活習慣改善支援サービスを訴求していたのがNECだ。

 健診受診者を対象に将来の健康診断結果を人工知能(AI)で分析して予測し、危機感を早期に伝えることで、生活習慣の改善に向けて取り組むきっかけを提供する仕組みだ。

 サービスで威力を発揮するのが、身体の多くの情報を一元管理して最適な改善方法について助言するヘルスケアアプリ「FiNC」。アプリを取り込み初期設定した利用者は、自治体などから送付される「QRコード」を読み取ることで、健診結果の予測データを確かめられるという。

 専門家が監修した行動変容のプログラムを発信することで、改善活動の継続も後押し。例えば、「生活習慣を見直すと3年後に体重や最高血圧がどう変化するか」といったシミュレーション結果を把握できる。同社のブースで担当者は「医療費の抑制や健康経営の促進に貢献したい」と力を込めた。

人の動き解析

 人の動きを解析するプラットフォームを披露したのが富士通。この技術のベースは国際体操連盟と共同開発した「AI体操採点システム」だ。演技の様子を撮影した結果をAIで分析することで、人間の関節の位置を特定し骨格を認識。最終的に3Ⅾ(3次元)データに変換し、さまざまな角度から演技を確かめられるようにする。

 想定される活用範囲は、体の機能を回復させるリハビリテーションから、アスリートのコンディション管理までと多彩。ブースでは、カメラでゴルフスイングを撮影した結果を分析し可視化するという事例のアピールに熱が入っていた。

住民の幸福感向上

 最新技術を生かして便利で快適な暮らしを実現する次世代都市「スマートシティー」づくりを後押しするウフル(東京都港区)の園田崇史社長は、北海道更別村村長とのトークステージで、地域住民の視点から幸福感を高める役割を担うことに意欲を示した。同社は、ウェルビーイングを定量的に把握する指標の高度化にも取り組んでいるという。

 富士キメラ総研がまとめた国内DX市場(投資金額)の調査結果によると、2020年度に約730億円だった医療・介護市場は30年度には20年度比2.9倍の2115億円に成長する見通し。

 急速な高齢化を背景に医療などの社会保障費が膨らみ続ける中、デジタルの力を用いて疾病予防や介護予防を推進するニーズは一段と拡大する方向にある。ウェルビーイングに満ちあふれた社会づくりに向けて新風を注ぎ込むテック各社の挑戦から、今後とも目が離せない。