2022.11.16 【EdgeTech+ 特集】 IoTの進展で注目を集める、エッジコンピューティング 根幹を担う組み込みシステム 市場拡大に期待

組み込みシステム(モジュール)の例

 IoTの進展に伴って、高速・大容量化する通信ネットワークの負荷を軽減する分散型アーキテクチャー「エッジコンピューティング」が注目を集めている。その根幹を担うのが組み込みシステム(組み込みコンピューター、エンベデッドシステム)で、産業分野を中心に成長が期待されている。

 エッジコンピューティングは、IoT端末などのデバイスそのものや、その近くに設置されたサーバーでデータ処理・分析を行う分散コンピューティングの概念であり、クラウドにデータを送らず、エッジ側でデータのクレンジングや処理・分析を行うためリアルタイム性が高く、負荷が分散されることで通信の遅延も起こりにくいという特徴を持つ。

 エッジコンピューティングは、組み込みシステムが重要な役割を担う。例えばパソコンだとソフトウエアやアプリケーションをインストールして、多様な機能を持たせるが、組み込みシステムは家電や自動車・産業装置などに組み込み、特化した機能の役割を担う。

 例えば、洗濯機なら汚れや衣料の素材に応じた洗濯時間、デジタルカメラなら撮影シーンに合わせた露出とシャッター速度、工作機械なら金属材料に応じた切削速度など、自動設定する機能を担う。家電、モバイル、自動車、製造装置、医療・ヘルスケアなど、さまざまな製品に広く活用されている。

 組み込みシステムはRTOS(リアルタイムOS)によって制御され、マイコン(マイクロプロセッサー)ベースのデバイスで高度に特定された機能を果たすように設計されたハードとソフトの両方のツールで構成し、モジュール化されている。マイコンを動かすプログラムのことを「組み込みソフトウエア」と呼ぶ。

 入力装置のセンサーから電子データを受け取り、マイクロプロセッサーがそれを計算して、必要な機能を果たす機械部品に情報を伝達する。

M2Mは組み込みシステムの集合体

 組み込みシステム産業用の拡大が期待されている。ドイツの第4次産業革命インダストリー4.0に端を発して「スマートファクトリー」が具体化し、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術を活用した生産システムで製造業の生産性を革新的に向上させ、最終的には工場の無人化、全自動生産化の実現を目指して進化を続けている。

 生産ラインの装置間でデジタルデータをやり取りするM2M(Machine to Machine)技術により、生産スケジュールに合わせた電子部品の補給、次生産への段取り替えを自動化、装置の自己診断機能による故障予知、生産不良が発生した場合には人を介さずに装置間で原因を突き止めて自動的に修正するなども可能になってきた。M2Mは組み込みシステムの集合体になる。また、電気自動車(EV)には組み込み用途で200個以上のマイコンが搭載される。

市場の動向

 組み込みシステムの市場は2021年から26年の間に約7%の成長が見込まれている。デジタル化の進展と産業界の自動化は、市場拡大の重要な要因の一つ。組み込みシステムは産業機器の性能向上、接続性の確保、全体的なコストの最小化に貢献する。ヘルスケア分野ではセンサー、ノード、超音波、X線、CTスキャンなどから得られるさまざまな形式のデータを読み取るために、組み込みシステムが使用される。

 IoTやAIを備えたコネクテッドデバイスの統合、無線通信インフラなど、さまざまな技術の進歩も市場の成長を促す要因となる。これらの推進にはシステムエンジニアやソフト開発技術者の育成が不可欠になる。