2023.01.01 【AV総合特集】’23展望 デジタルカメラ

デジカメは動画撮影にも使われるようになっている

ミラーレスカメラが市場の主役にミラーレスカメラが市場の主役に

ミラーレスが存在感
動画撮影ニーズ対応で付加価値

 デジタルカメラは、ミラーレスカメラが市場で存在感を発揮している。レンズ一体型の「コンデジ」と呼ばれてきた小型デジカメは、スマートフォンの普及と搭載するカメラの高性能化により、出荷規模は漸減傾向が続いている。カメラメーカー各社はミラーレスのラインアップ強化に力を入れている。今年もミラーレスの展開が戦略の要になってくるはずだ。

 「機動性などの観点から、APS-Cサイズセンサーが市場でますます注目を集めている」。ミラーレスカメラ「Xシリーズ」を展開する富士フイルムの山元正人取締役常務執行役員イメージングソリューション事業部長は、現在のデジカメ市場についてこう説明する。

 ミラーレスカメラは、同じくレンズ交換式の一眼レフカメラに比べて本体が小型だ。持ち運びしやすい本体サイズと重量に加え、レンズ交換式の特徴を生かした多彩な映像表現が可能。高性能化も進んでおり、アマチュアからプロの写真家まで利用が広がっている。

 カメラメーカー各社が加盟するカメラ映像機器工業会(CIPA)の統計によると、ミラーレス、一眼レフを合わせたレンズ交換式全体の出荷台数は昨年、1~4月までは前年割れの状況が続いていたが、5~10月は前年を上回る状況で推移している。特に6月以降は2桁以上の出荷台数だ。

 中でもミラーレスは、1~10月の累計出荷台数が前年同期比27.4%増の約328万3700台。同期間の一眼レフが約18%減少しているのに対し、出荷を大きく伸ばしている。特に出荷金額の伸びが大きく、前年同期からミラーレスは6割以上伸ばしており、より撮影性能に優れた高級機の需要が強まっていることがうかがえる。カメラメーカー各社も「付加価値の高い高級機が人気。単価アップが進んでいる」と口をそろえる。

 レンズ交換式では、写真の表現力を高めるために、高速撮影性能や正確に被写体を捉える性能、高画質化などが重視されている。人物や動物、車など動きのある被写体を自動追尾する機能なども人工知能(AI)を使って進化が続く。カメラ側で被写体にピントを合わせ続けてくれるため、撮影者はイメージする構図に専念できるようになり、表現力を高めることにもつなげられる。

 交換レンズのバリエーションも増えており、撮影シーンに最適なレンズを選びやすくなっている。

コンデジは減少

 一方、減少が続くコンデジは昨年1~10月累計出荷台数が約173万6400台。前年同期からの出荷台数は約3割減った。ミラーレスに比べると台数規模は約半分になっている。

 ただ、コンデジも月による変動が大きく、10月単月では前年同月から2割以上出荷台数が伸びている。コンデジでも台数以上に金額の伸びが大きく、単価は上振れ傾向だ。1~10月累計の出荷金額は5%程度の減少にとどまっており、台数の減少幅に比べて小幅になっている。

 カメラ各社もコンデジはラインアップを絞る傾向を強めている。その半面、スマホの撮影性能に満足しない一定層の需要はあると見る。ミラーレス以上に持ち運びしやすいため、さまざまなシーンで気軽に使える利点は小さくない。デザイン性や防水性能、動画撮影機能など用途に合わせて機種を選ぶことで、写真撮影の楽しさを実感できる。

 カメラとしての撮影性能に加えて重視されるようになっているのが、動画撮影性能だ。デジタル化が進んだことで、動画撮影として活用されるシーンが増えている。

 ミラーレスなどレンズ交換式では、4Kや8K画質での動画撮影に対応する機種も登場している。放送局などで使われる本格的な映像制作用カメラと異なり、例えばミラーレスであれば小型で使い勝手が良く、導入コストも抑えられる。動画撮影性能も年々高まっていることから、映像制作現場で使われることが増えてきた。

 同時に、ユーチューバーなど新たな動画撮影ニーズが出てきている。ミラーレスなどは、動画撮影機材としても活躍するシーンが増えていることから、写真撮影にとどまらない需要の拡大に期待が高まっている。

 コンデジの減少が大きいことから、デジカメ全体の総出荷が大きく伸びているわけではないものの、動画撮影ニーズにも応える付加価値品を中心に需要の裾野は広がっていると言える。

 新型コロナウイルスがまん延した当初、行動制限で外出自粛を余儀なくされ、趣味・嗜好品であるデジカメは一時的に大きな影響を受けた。ウィズコロナの中、その後は行動制限の緩和などで外出機会が増え、デジカメ需要の底上げにもつながっている。

 昨年10月には新型コロナの水際対策が大幅に緩和されたことで、翌11月の訪日外国人旅行者数は93万4500人(推計)に拡大。インバウンド需要も回復傾向にある。

 実際、訪日外国人の来店が多いヨドバシカメラマルチメディアAkiba(東京都千代田区)では、インバウンド需要に火が付き始めている。松本勝士副店長は「新型コロナの落ち着きにより、行動制限が緩和され、カメラといった趣味・嗜好品の動きが活発になっている」とし、インバウンド需要でカメラ用純正レンズが売れていると話す。すぐに以前のようなインバウンド需要の規模に回復するわけではないが、今後、訪日外国人が増えてくれば、日本が強みを持つカメラ関連製品の販売増につながるはずだ。

 デジカメは、ミラーレスを中心とした需要が今年も続く。気軽にいつでも撮れるスマホの良さはあるが、スマホでは実現できない表現力のほか、動画撮影性能の高さも魅力だ。コロナ禍でブームとなっているアウトドアなどは絶好の写真撮影の機会でもある。行動制限の緩和で人々の動きが活発になる中、デジカメ市場も活性化し、写真撮影を楽しむ人が増えるはずだ。