2023.01.01 【AV総合特集】’23展望 スピーカーシステム(ヘッドホン・スマートスピーカー)

フルワイヤレスヘッドホンでも高音質化が実現しており販売も堅調

完全ワイヤレス対応モデル増

無線接続の高音質化進む

 音を聴くためのスピーカーシステムは2023年以降も着実に伸長していく。Hi-Fiオーディオのスピーカーシステムは愛好家の間で底堅く動く見通しだが、ヘッドホンやイヤホン(インナーイヤー型ヘッドホン)の利用シーンはさらに拡大していくとともに、スマートスピーカーの需要は世界的に拡大基調だ。ヘッドホンなどは個人利用だけでなく在宅勤務などの際の業務用途での利用も拡大しており、新たな局面を迎えそうだ。

 スマートフォンや携帯オーディオプレーヤーで音楽を楽しむ人が増える中、ヘッドホンやイヤホンの高音質化が進んでいる。この数年はブルートゥース接続による完全ワイヤレス対応モデルが増えており販売は好調に推移。構成比も上がってきている。

 最近は音楽配信サービスの普及やスマホでの音楽鑑賞が定着していることから、イヤホンで音楽を聴く若者が急増してきている。数年前まではコード付きのイヤホンが主流だったが、この2~3年でワイヤレス対応モデルが一気に拡大し、価格も高額帯から普及価格帯まで幅広くそろってきた。アップルのiPhoneは7でイヤホンジャックを廃止したことから、一気にブルートゥースでのイヤホン接続が増えてきていることも背景にある。

 これまでは無線接続では高音質化が十分にできなかったため、Hi-Fiオーディオ愛好家の間では敬遠されてきていたが、無線でも高音質で再生ができる圧縮技術が出てきたため、ブルートゥースでも高音質で音楽が楽しめるようになったことも追い風だ。

 CDよりも高音質なハイレゾリューションと同等の音質を実現する通信の技術もあるため、現在は完全ワイヤレスヘッドホンが主流になりつつある。日本オーディオ協会のハイレゾロゴ取得製品にもワイヤレスヘッドホンが増えてきている。

 ワイヤレスヘッドホンの最近のトレンドはノイズキャンセリング機能だろう。外出時の騒音下でも外部の音を遮断し、静粛な状態で音楽が楽しめるものだ。

 ソニーをはじめ、各社がノイズキャンセリングへの取り組みを本格化している。さらに円滑に通話に移行できたり、会話の声を聞き取りやすくしたりする機能を備えるモデルも出てきている。

 コロナ禍で在宅勤務が増え、リモート会議などを行うケースが増えてきた。これにともないヘッドホンを業務用途で使う需要も拡大。会議しやすいヘッドホンを発売するメーカーも増えてきている。さらにゲーム用途でのヘッドホンも製品群が増えてきた。より没入感を高める3Dオーディオ(イマーシブオーディオ)に対応したヘッドホンや、頭外に音を定位させる技術を使ったヘッドホンもある。より臨場感と没入感のある音再現を実現していく動きはさらに加速していくとみられる。

 特にワイヤレスヘッドホンは装着感だけでなく、駆動時間、ノイズキャンセリングのチューニングなど、メーカーや製品によって異なるため、実際に体感できる場を増やしていくことが求められる。

 スマートスピーカーも世界的に拡大していく。アマゾンやグーグルのスマートスピーカーの普及をきっかけに一気に拡大してきている。スマートスピーカーは音声でさまざまな情報が得られるだけでなく家庭内の家電製品などの操作ができる機種もある。

 さらに音楽ストリーミングサービスと連携し音楽を流すこともできる。SNS連携やショッピングなども簡単にできるため、利便性は高まってきた。最近はディスプレー装着タイプもあり、動画の再生やテレビ電話もできてしまう。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の「AV&IT機器世界需要動向」によると21~26年までのスピーカーサウンドシステムの年間平均成長率は5.6%で26年には世界で2億1927万台になるとと予測している。

 その中でスマートスピーカーが全体をけん引していく見通しだ。スマートスピーカーの世界市場の構成比は21年の84.3%から26年に89.1%まで拡大するとみており、とくに言語対応が進む新興国で拡大していくとみている。

 ブルートゥースでの接続対応ができる製品やテレビにもスマートスピーカーの人工知能(AI)アシスタントを搭載する製品も出てきているため、今年も家の中心にスマートスピーカーが置く家庭がさらに増えてきそうだ。