2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23展望 癒やし

サーキュレーター機能を備えた照明が快適性を高めるのに一役買っている

空間やシーンでの癒やしニーズへの対応が鍵空間やシーンでの癒やしニーズへの対応が鍵

自宅時間を快適に過ごしたい
照明器具などで空間演出  

 自宅で過ごす時間が増え、緊張を解いた自宅ではこれまで以上にくつろぎたい―。そんなニーズが社会的に高まっており、家電に求められる機能や役割にも変化が表れ始めた。新型コロナに伴う行動制限は昨年から緩和されているが、外出時のマスク着用という生活に変化はなく、〝おうち時間〟を少しでも良くしようとする消費傾向は今年も強まるはずだ。

 エアコンや洗濯機、冷蔵庫に代表される白物家電は、生活に密着した製品。家事負担の軽減により、豊かな生活を送れるようにすることに主眼が置かれるとともに、快適性も重要な要素としてこれまでも開発されてきた。大型家電に限った話ではないが、ここに、癒やしという要素が重要なものとして加わり始めている。

 住空間の癒やしスペースとして「ヌック」に注目が集まった昨年。小さなくつろぎスペースのことを指し、例えば階段下の小スペースを活用したり、新築やリフォームで採用されたりするケースが増えている。ヌックは「おひとりさま時間」を満喫するためのスペースだ。

 こうしたパーソナル空間に必要なのが、柔らかい光を演出する照明器具をはじめとする小物類。家電ばかりではないが、空間演出には、照明に加え、卓上型空気清浄機やアロマディフューザーなども大切なアイテムの一つになり得る。

 自宅の在宅スペースを癒やし空間に改造しようとする動きも活発だ。

 当初は新型コロナ下の在宅勤務により、急場しのぎの在宅スペースとして使っていた場所だった。しかし、コロナ禍の3年を経て、使っていた何の変哲もないデスクは、スマートフォンやタブレットなどの充電環境を備えた電動昇降タイプへと進化させる消費者も登場してきた。もちろん、専用ワークチェアで疲れにくさも重視した環境に。

 在宅スペースの環境整備は業務効率の向上につなげられる。同時に、仕事にもリラックスタイムにも使える中型モニターを備え付けて置けば、「おひとりさま時間」を楽しめる空間に一変する。スタートアップのアトモフ(京都市中京区)が開発・販売するデジタル窓「アトモフ ウィンドウ」を壁に設置すれば、クラウドと接続して世界のさまざまな風景を部屋に居ながらにして楽しめる。癒やしを提案する家電は増えており、うまく使えば住空間を大きく変えられる。

 〝究極の癒やし空間〟とも呼べる寝室では、快眠を得るために家電の果たす役割も大きくなっている。空間に溶け込むデザイン性に優れた空気清浄機や加湿器で快適な空質環境を実現するとともに、ベッドサイドに置いたテーブルライトまたはフローリングに置いたフロアライトで、明るすぎないほのかな照明環境を構築。IoT化した照明であれば、スマートスピーカーによる音声操作でリモコン操作も不要と、快適性と利便性を兼ね備えることも可能だ。

 また、寝室において、空間演出以上に大事になるのが、睡眠の質の担保だ。心地よい眠りにいざなう掛布団やマットレスなどの非家電品ばかりでなく、マットレスにセンサーを搭載して睡眠中の動きを検知する製品も登場している。専用アプリとの連動で、睡眠状況に合わせたエアコン制御などにつなげる提案も進んでいる。

 ただ、こうしたサービスを受けるには専用のマットレス購入やサービスとの契約が必要になる。もっと手軽に、睡眠の質や健康管理に生かそうと、スマートウオッチや指輪形状のスマートリングを使って睡眠状況の改善につなげ、リラックスするための工夫につなげる消費傾向も出てきている。

IoTや機能性

 デザイン重視の製品には癒やしを求める傾向が強い半面、IoT技術や機能性でそれを実現する家電もある。コロナ禍で重要性が高まった換気に対しサーキュレーターを一体化した照明がその一つ。天井という照明の好立地を生かして部屋の空気を循環させ、快適性を実現した製品として話題を呼んでいる。1台2役や3役といった家電は、住環境の狭い日本では購入時に重視されるポイント。時代に即したニーズへの対応に加え、デザインと機能、そして価格のバランスを最適化した製品は消費者の支持を集めやすい。

 癒やしにつながる製品は多岐にわたる。マッサージ器など単体で癒やしを提供する製品も少なくないが、現在の社会環境で求められているのは、生活シーンとしての癒やしだろう。単体で癒やしを提供する製品も重要だが、シーンや空間として癒やしを実現した方が、より心身の疲れを取ってくれるはずだ。

 ゲーミング分野では、ゲームの映像や音楽に連動して照明が調光調色する製品なども人気だ。

 IoT化の浸透で、機器同士は連携しやすくなった。これまでスタンドアローンで使ってきた各種家電は、シーンに合わせて一括制御できるようにもなってきた。これからの癒やし空間には、個々の癒やしグッズを置くだけでなく、IoTも生かして組み合わせた空間づくりが注目されそうで、今年も関連需要は高まるはずだ。