2023.01.04 【家電流通総合特集】家電流通 我が社の戦略 パナソニックコンシューマーマーケティング 宮地晋治代表取締役社長

宮地 代表取締役社長

DX化や組織改革が表面化 商品価値語れるプロへ

 今年は、昨年から取り組んできた社内のDX化や組織改革が表面化してくる一年になる。2024年にも実現したいと思っている、販売店への新しい商品供給の仕組みづくりに向けて、お客さまからさらに支持されるために、パナソニック商品の価値を語れるプロ集団を目指していく年だ。

 昨年は上海ロックダウンによる商品供給の停滞や為替、物価高などが販売面にも大きく影響した。条件付き販売商品についても、市場環境の変化に対する柔軟性という面で、スピード感に課題が見えた一年でもあった。

 今年は、こうした課題の解決とともに、補助金といった自治体情報の迅速な把握や、地域特性への対応、そして何よりパナソニック商品の魅力を正しく伝えていくために、組織体制を七つのマーケティング・エリア社体制に4月から再編したいと取り組んでいる。

 これまでのように、家電量販店チャンネルの「CE社」、パナソニックショップ(PS)チャンネルの「LE社」といったくくりではなく、エリアごとに量販店も地域店もまとめて営業できるようにしていく予定だ。それを可能にするのがDX化になる。

 商品の販促や提案など、量販店向けでも地域店向けでも同じような内容にそろえ、「元量販店担当だから地域店への提案が難しい」といった事態を減らすようにする。これまで部門ごとに縦割りだった情報伝達の仕組みを見直し、エリア内の情報は横連携できるようにしていく。

システム刷新・改編

 そのためにはシステムの刷新、改編が必要で、昨年から大規模なIT投資を行っている。多くのグローバル企業が採用するセールスフォースやSAPなどのクラウド型システムを導入し、さまざまなシステムとの連携を図りたいと思っている。営業を効率化するツールとの接続のほか、変化のスピードが速いサブスクリプション(定額制)サービスへの対応なども考えると、柔軟性のあるシステムは不可欠だ。

 業務効率の改善ばかりでなく、新しいシステムを活用して24年にも量販店のシステムと連携し、店舗での販売状況に合わせて迅速に商品を補充できる体制を整えたいと思っている。今は商品が売れると店舗から発注され、在庫がなければ生産拠点に連絡して生産、補充するという形だ。

 しかし、量販店とのシステム連携が実現すれば、売れ行きなどをリアルタイムに見ながら需要予測を立てて生産し、商品を迅速に補充していける。七つのエリアに支社を分けているのも、実需はエリアごとに変動するため、その変化をつかみ、地域に合った対応を進めるためだ。

 例えば食洗機は、地域によって普及率にばらつきがある。これまでであれば、全国一律の販促策を打ち、販売を伸ばそうとしてきたが、エリア制を導入することで地域を絞った販促が打てるようになる。こうした販促策の方が費用対効果も高く、商品の生産についても、お客さまのウェルビーイングにとってもプラスに働く。サステナビリティー(持続可能性)という観点からも、エリアごとのきめ細かな対応は今後必要になるはずだ。

実需起点で提案を

 地域店についても、約2年前から実需起点での商品提案をお願いしてきた。当社も以前は地域店に商品を仕入れてもらうことに主眼を置きがちだったが、商品を購入するのはエンドユーザーであるお客さま。お客さまの実需に基づき活動してもらうようにし、当社もそれに即した情報提供に力を入れるよう体制を変えてきた。

 この2年で地域店にも、当社の目指す方向性をだいぶ理解いただけたと思っている。地域店への商品供給についても、新しいシステムを連携できれば、物流の効率化などを図れると考えており、しっかり検討していきたい。

 あわせて商品供給の仕組みを変えていく上では、パナソニック商品がお客さまから支持されることが前提になる。そのためには、より長く使ってもらえる商品の耐久性に加え、長く使っていても修理などのアフターサービスにきちんと対応できることも重要になる。

 さらには、お客さまが商品を使っている間、ずっと面倒を見る体制をどうつくっていくかも視野に入れて、システムを導入していかなければならない。DX化と合わせて、IoT家電を普及させることで、こうした新しい体制を整えることができると思っている。

 それは、今だからできると思っている。幸い当社は、国内の家電市場でさまざまな商品で高いシェアを持っている。多くのお客さまからも支持されている。規模を持っているからこそ思い切ったシステム刷新にも踏み切れる。

 パナソニックは、日本地域全体を統括する「コンシューマーマーケティングジャパン本部」を01年に立ち上げた。4月を目指しているエリア社制導入をはじめ、関連するIT投資や目指す将来像に向けた組織変更は、それ以来となる20年振りの大改革と位置付けている。

 社長就任から、21~22年の2年間で、非効率的だった無駄な部分を取り除き、製販で連携できる土台をつくってきた。今年はDX化の加速で次の新たな仕組みをつくる年。そのためにも、販売会社としてもう一度商品の販売にこだわっていく。

 23年度中には地域店向けのカタログを全てデジタル化していく。地域店で先行しているLINEを活用した販促やお客さまとの接点活動など、地域店もDX化を商売に積極的に生かせるようサポートしていきたい。例えば、デジタルチラシでは、自店に必要な商品だけ掲載できるようにするなど、デジタルならではの柔軟性を持たせた販促提案などを実現していきたい。

 今年は、新しいシステムを整備し、24年または25年にチャレンジできる環境を今のうちに構築する。商品を語れるプロ集団としての在り方が改めて重要になる。