2023.01.04 【家電流通総合特集】家電流通 我が社の戦略 東芝コンシューママーケティング 千田一臣取締役社長

千田 取締役社長

製品価値、お客に伝える
東芝ストアー、オンラインを積極活用

 昨年は、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、素材価格やエネルギー価格の高騰、物流費の上昇などさまざまなことが重なり、経営にもインパクトを与えた。このような年はなかったのではないだろうか。コロナ禍はどちらかというと家電に追い風だったが、その風向きがいよいよ変わってきたように感じた。

 そのため、家電需要にも影響を与えるかと思ったが、販売台数は落ちたものの、付加価値の高い製品の人気などで販売金額が上がったことで、思ったほどマイナスの影響にはなっていない。ただ、厳しい状況に変わりはなく、この状況をどう乗り越えるべきか頭を悩ましたのは、各社同じだったはずだ。

 こうした中、当社は昨年(1~12月)で売り上げを伸ばすことができた。主要6製品(エアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、掃除機、炊飯器)を軸に販売を拡大できており、軌道に乗ってきたと手応えを感じている。

 為替の影響は大きいが、冷蔵庫やドラム式洗濯乾燥機、エアコンなどの大型製品では、魅力的なフラッグシップ機もそろっている。エアコンでは7年ぶりのフラッグシップ機「K-DRシリーズ」を発売し、省エネ性に優れた製品として高級機での拡販を進めているところだ。

 これまでユーザー視点の取り組みを重視してきたことで、当社製品の価値をお客さまに伝えることができるようになってきたと思う。そのかいもあって国内市場でシェアを伸ばすことができていると見ている。

 系列の地域電器店「東芝ストアー」の施策も2021年から見直しに着手している。ストアーに届く情報量やその質を全店で均一にするために、オンラインを積極活用する施策へと転換している。

 従来のように、営業担当が訪問し情報を提供する手法では、担当者の営業スキルによって差が出る上、情報鮮度や物理的に届けきれないなどの課題もあった。コロナ禍でサプライチェーンが一時的に混乱した際にも、製品在庫の正確な状況把握なども見えるようにする必要もあった。

セルアウト重視

 同時に、セルアウト重視の営業体制に切り替え、当社製品をストアーに安心して販売してもらえるよう情報の平等性を担保したセールスを実践することを目指している。ストアーとともに成長するためにも、ストアーが今後どういう経営をしたいか、その方向性に合わせられるように関わり合い方を変えている。商品についても、量販店との価格差をできるだけ小さくするよう取り組んでいる。

 1月1日付でストアールートの営業体制も変えている。これまでは「東日本営業部」「西日本営業部」「オンライン営業部」という三つの組織で運営していた。元々あった「地域営業部」の下に、それらを統合した「営業部」を新設した。営業部の中の一つの組織として「オンライン地域支店」も新設し、全国各地のストアーに情報を提供できるようにしている。

 オンラインばかりでなく、リアルに情報を伝える方が良い場合もあるし、ファクスの方が正確に伝わる場合もある。ストアーによって対応は異なってくるため、営業効率を高めるためにも、新しい体制の方が良いと判断した。既に導入しているストアーもあるが、今後はLINEを使ったやり取りなども進めていきたい。ストアー施策はこれで見直しが完了したというわけではなく、社会環境や市場状況に合わせて、今後も継続的に変えていく必要があり、まだ途上と言える。

 ストアーの販売も昨年は前年を上回り、成長することができた。施策を見直し、ともに成長を目指そうという思いを共有できたのではないかと思う。例えば、ストアーで課題となりがちな後継者問題についても、血縁ばかりが選択肢ではなく、従業員などもう少し広く捉えることで、継続的に成長できる可能性も出てくる。こうしたことに当社が貢献できる余地は十分あり、前向きな投資であれば実施したい。今後もストアーの成長に貢献する投資は積極的に行っていく考えだ。

 コロナ禍で合展は開催できていないが、代わりに用意した大感謝祭チラシが好評で、提案活動にストアーが利用してくれている。普段の活動ばかりでなく個展に生かすところもある。合展の開催は新型コロナの感染状況もあって不透明だが、今後の催事の在り方も環境に合わせて考えていく必要はあるだろう。

成長をサポート

 ストアーにとっては、既存のお客さまへの営業活動に加え、増客活動も行わなければ成長はできない。増客に積極的なストアーは将来に対するビジョンを持っている。当社としても、対応できるよう体制を変えていくとともに、成長を目指すストアーへのサポートは続けていく。

 今年は、昨年の経験を踏まえ、不測の事態にどう備えるかを考えながら、製品をしっかりと供給し、お客さまに購入してもらえるよう魅力をどう伝えていくかが重要になる。お客さまとストアー、当社とストアーとの関係などをきちんとつくっていく。同時に営業や製品説明など、取り組んでいる行動の質を全体的に高めていかなければならない。

 量販店でも東芝ブランドの製品が、以前よりも選択肢に入ってきているという手応えを感じている。販売現場でも、来店したお客さまに当社の高級機といった付加価値の高い製品を提案してくれている。定番品としても導入されており、今後も製品の魅力をしっかりと伝えていきたい。