2023.01.04 【家電流通総合特集】家電流通の視座 サンエコライフ 石原健一郎専務

石原 専務

 外的要因に大きく左右されたこの一年、影響は今年も続く。生活シーンや空間演出を重視する風潮はさらに強まり、エネルギー価格の高騰で省エネ・節電意識も高止まりしている。家計への負担を減らしつつも、環境への配慮と合わせ、より良い暮らしの追求を望む消費者が増える中、家電流通に携わる量販店と地域店には、将来を見据えた一段高い視座が求められる。

「便利」から次のステップへ カフェ併設など次世代型店舗に力

 昨年は物不足や物価高など多くの課題で大変な一年だった。一方で規制緩和が進んだことで業態転換を本格始動させた年でもあった。

 今後、地域電器店が5年、10年後も存続するためには、日常的な来店を促進する施策が必要不可欠だ。これまで地域店は、困り事を解決する「便利屋」として親しまれてきたが、今やそれは当たり前と言え、次のステップに進む必要がある。価格で競争するのではなく、「便利」という長所をさらに伸ばすことが生き残る唯一の道と信じている。

 当社は1980年に三洋電機から独立して「でんきの石原」として創業した。その後はグループの結成など、さまざまな業態転換があったが、創業当時から「便利なお店」を目指すという経営理念を一貫している。

 お客さまの生活を豊かにするため、太陽光発電システムなど時代に合わせた提案を行ってきた。今後はIoT家電が暮らしを便利にする手段の一つになると考え、2021年9月に店舗移転と共にIoT家電を体験できる「スマートライフショールーム」を開設し、お客さまの生活全体をサポートする業態に転換した。

 ショールームでは、家電や住宅設備をインターネットに接続し、音声操作などを体験できる。IoT化の恩恵を特に受けることができるのは地域店の主要客である高齢者だ。テレビやロボット掃除機のほか、自宅のシャッターから玄関まで音声で操作できるようになれば、足腰が弱っている人でも簡単に家中を管理できるようになる。

 しかし、ショールームという「ハード面」だけでは業態転換として不十分だ。お客さまの来店を促す「ソフト面」の施策が必要だ。従来も個展などの仕掛けはあるが、日常的に足を運ぶ理由にはならない。

 そこで4月にオープンしたのが、お客さまの「くらしを考える場」をテーマにした次世代型店舗「KURA_THINK(クラシンク)」だ。全国で3店舗目、九州では初となる試みで、さまざまな地域のコーヒーを楽しめるカフェスタンドや、美容家電を定額で1日60分利用できるサブスクリプションサービスを始めた。

 本格的なコーヒーは、多くのお客さまに気に入っていただいている。半年間の実績では、月平均で約160杯提供した。地域のお菓子屋さんともコラボし、月平均で約355個販売している。

 美容家電のサービスは、月々3800円でスチーマーやイオンエフェクターなど5種類の家電をセルフサービスで利用できる。1500円で都度利用も可能で、月平均の利用回数は48回に上る。

 このように、カフェやサブスクサービスは店に立ち寄ってもらうきっかけづくりに役立っている。スマートライフショールームとクラシンクの相乗効果を生み出すためには、接客するスタッフのスキルアップも欠かせない。IoT家電でお客さまの便利を提供するには、困り事と商品価値の両方を把握している必要があるからだ。

 高齢化が深刻な地域店は人材確保も喫緊の課題で、長く働ける環境の整備が必要だ。当社は店休日を設けていないが、シフト制で年間111日の休日を取得できるようにしている。今年は120日に増やしたいと考えている。

 給与や休みを増やすことだけが「働き方改革」ではない。当社は「働く意義が自らの目的達成の一部」というスローガンを掲げ、今後も一人一人のスタッフが将来のビジョンを持って人生設計できる環境づくりを推進する。

 地域で仕事をさせてもらっている電器店として、地域貢献も欠かせないと思っている。本部では周辺地域を毎日清掃しているほか、お祭りにも積極的に協力している。

 カーボンニュートラルやSDGsにも取り組む義務があると考えており、「熊本県SDGs登録制度」に登録して、太陽光発電や蓄電池などエネルギー創蓄連携システムの提案を進めている。

 「サンエコライフ」の社名は、太陽(サン)、環境(エコ)、生活(ライフ)からきており、今後も環境対策に取り組んでいきたいと思う。