2023.01.11 【電子部品総合特集】電子部品物流動向 サプライチェーンを強靱化

アルプス物流の横浜新倉庫に設置された電動式大型ラック

 エレクトロニクス産業や自動車産業のグローバル化が進む中で、電子部品企業には、顧客ニーズに対しタイムリーに商品を供給していくための体制作りが求められている。特に2022年は、半導体などの部材不足が長期化したほか、新型コロナによる中国での長期ロックダウンなどが業界のサプライチェーンに大きな影響を与えた。このため、電子部品メーカーや商社では、部材調達の強化やグローバル生産体制見直し、物流見直しなどを進めることで、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化に取り組んでいる。同時に、電子部品物流企業は、物流品質向上やサービス拡充に努めることで、電子部品物流業務の高度化を図っている。

 電子部品メーカーが受注から納品までのトータルリードタイム(L/T)を短縮するには、試作・設計開発、部材調達、生産、物流など各要素での個別L/T短縮に加え、これらの流れを一元的に捉えた最適な管理システムの構築が不可欠だ。

 最近は、電機や自動車業界のグローバルユーザーのアジア生産拡大に対応するため、部品各社は中国やASEANでの物流体制を強化。倉庫からの直送による短納期対応に力を注いでいる。中華圏でのアウト-アウト拡大に向け、香港などの物流機能拡充に力を注ぐメーカーも多い。

 加えて、近年は米中摩擦などに伴うチャイナリスクに対処するため、ASEAN域内における物流ネットワーク整備も重視されている。国内外の自動車/車載電装機器業界の地産地消要求に対応するため、北米や欧州、インドなどでの物流体制構築にも力が注がれている。さらに20年以降の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う移動制限やロックダウンへのリスクも、こうしたグローバルでの地域完結型の体制作りを推し進めた。

 一方で、22年は前年からの世界的な半導体不足が継続し、また、20年の終盤から問題が指摘されていた世界的な物流逼迫(ひっぱく)も年央頃まで深刻さが継続した。このため、業界のサプライチェーンの寸断や混乱が生じ、21年と同様に、多くの電子部品企業が部材調達・生産・客先への納入の面で大きな苦労を強いられる状況となった。

 電子部品各社は、これらの課題に対処するため、素材メーカーとの連携による原材料調達力向上や、航空輸送の活用拡大、物流体制見直し、ディストリビューターやパートナー企業との連携など、L/T短縮に向けたさまざまな取り組みを推進している。

 加えて、最近の電子部品市場では、物流業務における環境対応や安全対応、セキュリティーの向上も一段と重視されている。倉庫保管時や配送時の高度な温湿度管理、物流改革を通じた省エネ/脱炭素化、トレーサビリティー機能の充実による誤出荷の徹底防止が追求されている。

 電子部品物流サービス企業は、これらのニーズに対し、国内外物流ネットワークの拡充や取り扱い技術の高度化、ITの活用による「物流の見える化」、環境/セキュリティー対応などを強化し、物流サービスの高付加価値化を追求する。

 電子部品物流は、JIT(ジャスト・イン・タイム)、少量・多品種、少量・多頻度、多様な梱包(こんぽう)形態、専用納品書対応など、さまざまな特色がある。物流企業はこれらに対応した最適なサービスを強化し、VMI(ベンダー・マネジメント・インベントリー)倉庫の拡充、JIT納入、キットでのJIT納入といったサービスメニュー拡充に取り組んでいる。