2023.01.13 【放送/機器総合特集】CATV業界 地域無線活用し課題解決に貢献

ローカル5Gなど強化

自治体や地域の企業とタッグ

 ケーブルテレビ(CATV)業界は、地域の無線を活用して地域課題解決への貢献を目指す。

 2022年3月末のCATVの加入世帯数は約3139万世帯で、世帯普及率は約52・5%となった。

 CATV業界は地域課題・ニーズに対し、地域BWA、ローカル5Gなど、地域で利用できる無線システムを最大限活用し、地域DX(デジタルトランスフォーメーション)の担い手として地域のあらゆる課題に一緒に取り組んでいる。

 社会の基盤として通信インフラの重要性が高まる中、CATV事業者は自治体や地域の企業とタッグを組み、地域のインフラを活用して社会のデジタル化に貢献してきた。

 将来の地域のネットワークとして、CATV事業者が持つ「光ファイバー(FTTH)」を有効活用し、地域BWAで全域をカバーし、ニーズのあるエリアにはローカル5G(Sub6、ミリ波)を展開し、ギガbps級の超高速ワイヤレスサービスを提供することを目指す。

 その中でも地域密着型のCATVの強みを生かし、ローカル5Gの普及に向けた取り組みを強化。CATV事業者は自治体とともに、地域課題の解決に向けたツールとして新たな技術(ローカル5G)を積極的に活用してきた。

 22年度も地域事業者としてCATV事業者が4件採択された。秋田ケーブルテレビは秋田市で、ローカル5Gを活用した風力発電の設備利用率の向上によるカーボンニュートラル社会の実現を図る。

 地域ワイヤレスジャパンは栃木市で、ゴルフ場におけるコース運営の効率化および新たなゴルフ体験の実現を目指す。ZTVは三重県尾鷲市で、AI(人工知能)画像認識によるブリ養殖の効率化に向けた実証に、ハートネットワークは愛媛県新居浜市で精製物のAI粒度判定などによる離島プラント工場の業務効率化に取り組む。これらの開発実証は今月から本格的な検証を開始する予定だ。

 日本ケーブルテレビ連盟を中心に、ローカル5Gサービスのための設備整備と戦略的な展開を目的として、19年に新会社「グレープ・ワン」を設立し、業界統一コアを立ち上げた。業界全体で協力、連携をしながら積極的な利用の啓発を進めている。

 グレープ・ワンはCATV事業者向けに、無線サービスにおける基幹システムとなる無線コアネットワークの構築、回線サービスの提供、基地局や端末の販売・運用・保守に至るまで総合的なサービスを提供。システムのコア部分はCATV事業者が共通で使い、基地局はCATV事業者が資産として運用する。機器の監視関係は一元的にグレープ・ワンで実施し、効率化を図っている。

 こうしたローカル5Gなど新たな技術を利用し、地域の人材力・技術力の強化につなげていく。

IT・DX人財育成プログラム開始

CATV技術者資格制度を改定

 ▼CATV業界における人財育成の強化

日本ケーブルラボが昨年11月に開催した、22年度前期JQE資格認定証授与式の様子

 一方で、CATV業界においても放送のデジタル化や放送・通信の融合に始まり、放送技術や多様化するサービスなど、CATV事業を取り巻く環境は大きく変化している。また、技術者の高齢化などによる人手不足も課題になっている。

 こうしたCATVを取り巻く環境の変化に対応するため、人財育成への取り組みを積極的に行っている。

 日本ケーブルテレビ連盟は「2030ケーブルビジョン」の策定をきっかけに、各社からの採用・人財育成のニーズを吸い上げ、昨年4月、人財委員会を立ち上げた。①人財採用における業界ブランド向上②IT・DX人財育成③健康経営・Well-beingの推進、の三つの柱で業界共通の施策を検討している。

 特に人財育成の強化のため、新たに「業界のIT・DX人財育成プログラム」を開始。新規採用や既存の人財をリスキリングし活性化する一助としてeラーニング、研修プログラムを実施している。

 日本CATV技術協会では、従来の専門に特化したエキスパート資格というCATV技術者資格制度を改正し、第2級CATV技術者、第1級CATV技術者、CATV総合監理技術者の3資格に集約した。

 また、時間や場所に制約されないよう、eラーニングとCBT(Computer-Based Testing)を採用。eラーニング講習ではパソコンやモバイル端末を使用し、自己学習する。CBT試験は全国200箇所以上にあるテストセンターにてコンピューターで試験を行う。1年間の実務経験の条件がなくなり、誰でも受験できるようになった。

 CATV総合監理技術者と第1級CATV技術者試験の講習・試験申し込み受け付けは11月ごろ、eラーニング講習は12月初旬~2月中旬ごろ、CBT試験は2月ごろを予定。第2級CATV技術者試験の講習・試験申し込み受け付けは5月ごろ、eラーニング講習は6月中旬~8月中旬ごろ、CBT試験は8月ごろを予定。

 日本ケーブルラボでは、ケーブル事業者の技術者やサービス企画者の育成を目的に、16年度からJQE資格制度を導入。JQE資格検定試験の受験資格となるJQE資格検定講習会を実施している。JQE資格は、JQE資格検定講習会を受講の上、JQE資格検定試験に合格すると付与される。22年度前期(7月)試験合格者は計19人で、11月にJQE資格認定証授与式を開催した。