2023.01.13 【放送/機器総合特集】住友電気工業 貴田渉 ブロードネットワークス事業部事業部長

貴田 事業部長

上質なFTTH化対応製品で オールIP化に向け推進

 2021年以降、総務省の「高度無線環境整備推進事業」補助金を活用したFTTH(光ファイバー)インフラ整備の設備投資が旺盛である。

 当社は以前からFTTHインフラを構成する製品開発に取り組んでおり、その中でも従来のPONシステムの10倍の通信速度を提供する10G-EPONシステム(OLTとONUで構成)は高密度実装による省スペース化や運用コスト削減の面で全国の事業者から評価されている。現在、100局以上のCATV事業者に採用されており、トップシェアを得ている。

 現在、10GのOLT装置と光スイッチを組み合わせ、OLTのカードや光リンクの故障時に自動的に切り替える冗長化システムを開発中で、これによりOLTの回線カードやPON区間の冗長化を実現する。同システムは光リンクまで冗長化できる点が、当社独自の大きな強みであると考えており、23年度早々に製品化を目指す。

 CATV業界では現行の2K放送対応のC-CAS方式から4K8K放送対応のACAS方式への移行を進める中、両方の装置を共存させる過渡期において省スペース化を求める声が多い。

 当社は新暗号方式ACASに対応した高度ケーブル自主放送サービスとして、高度化対応デジタルヘッドエンド(HE)装置「FLEXCITERシリーズ」を提案してきた。また、高度ケーブル自主放送HE装置とCATVのローカル自主放送にスクランブルをかける「高度ケーブルローカル自主スクランブル装置」も展開している。これらの装置はコンパクトな設計で、より高密度に実装できることが特長で、省スペース化と運用コスト削減に貢献できる。

 また、CATV網を活用したシステムとして、防災・地域情報(映像素材など)を簡易にライブ放送ができるMPEG-DASH出力対応「ライブ配信ユニット」を提案している。いつでも誰でも必要な情報が見られる配信システムを目指している。

 一方、世界的な半導体部品不足が続いている中、当社の世界40カ国、400拠点以上のグローバルネットワークを活用した調達や代替部品への設計変更などで安定調達を目指してきた。引き続き半導体メーカーとのパートナーシップを強化し、部品の安定調達に努め、お客さまの期待に応えるよう生産体制を整備していく。

 今後は、日本ケーブルテレビ連盟の「2030ケーブルビジョン」に合わせ、放送・ネットワーク・ワイヤレスを重点に、CATVのトータルシステムインテグレーターとしてより一層貢献できるよう注力していく。

 FTTH化されたネットワークの利活用として、さらなる放送サービスの高度化を目指して放送のオールIP化に向けた取り組みを推進していく。当社は、放送系IP再送信装置とIP-STBの自社開発と大規模な商用環境での長期安定運用の実績を有する。23年はこの実績をベースにして、CATV事業者とのフィールド実験を計画しており、サービス実現に向けた取り組みを加速する考えだ。また、OTTサービスとの連携強化や機能充実に取り組むとともに、オールIP対応4K-STBを含め、ラインアップの拡充を進めていく。

 また、近年ネットワーク全体の省電力化、脱炭素が全世界で求められており、これを実現する光ネットワーク技術が注目されている。当社はNTTが提案している、新たな世界を実現する「IOWN Global Forum」にスポンサーメンバーとして参画し、このIOWN構想の柱の一つである「オールフォトニクス・ネットワーク」に注目している。当社が保有する光通信技術の集大成で社会貢献を果たすべき分野として将来に向けた開発も加速する。

 今後もトータルソリューションを提供できる体制と製品ラインアップの拡充を進める。