2023.01.13 【放送/機器総合特集】 ソニーマーケティング 粂川滋代表取締役社長

粂川 社長

質の良いコンテンツ制作へIPとクラウドを活用

 エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業における国内のセールス&マーケティング機能(民生用、B2B、モバイル)の全てを扱う会社として新たに発足して今年で2年目になる。

 昨年は、地方放送局の設備更新需要が顕在化して、放送機器やシステムの需要が堅調に推移している。また、業界に先駆けて提案してきた「IP Liveプロダクションシステム」は、長崎放送や日本BS放送、ケーブルテレビ徳島などにも採用され、地上波の放送局以外にもIP化の波が来ていると感じており、確実にIP化が広がっていく手応えを感じながらビジネスを進めた一年だった。これからこの波をどれだけスピード感を持って、市場を変えていけるかが大きなチャレンジだと思っている。

 他方で、OTTの台頭などにより視聴環境の多様化や放送コンテンツ以外のさまざまな映像コンテンツの需要が増大している中、放送局も地上波番組をTVerや自社配信サイトなどに展開している。こうしたコンテンツの二次利用や三次利用への需要に向けてより良質なコンテンツを作る機運が高まっていると感じている。

 こうした多様化するコンテンツをいかに効率的に、より質の高いコンテンツを制作できるかが課題となる。

 当社はいち早くIP技術とクラウド技術を活用し、撮影から配信までの映像制作のワークフローの効率化を支援するソリューションを提供してきた。さらに今後の目指す方向性として、昨年これまで培ってきたクラウド技術やAI、カメラなどの放送機器、通信技術などを組み合わせてさらに進化させた次世代のクラウド制作プラットフォーム「Creator s Cloud」と、従来のIPベースの映像制作ソリューション〝IP Liveプロダクションシステム〟の枠組みを広げたオンプレミスクラウド・ライブプロダクション「Networked Live」の二つのソリューションを打ち出した。

 今後、この二つのソリューションを主力で推進し、時間と場所の従来の制限を超えた映像制作ワークフローを定着させたいと強く思っている。そこには、安心して使える環境づくりが必要で、当社のセールスチームとマーケティングチームが一丸となって取り組んでいく。

 特にIPに関しては、モバイル事業も持っており、放送局のみならず、通信キャリアも一緒になってPoC(概念実証)をやっている。そこで経験値を積みながら安心して使える環境づくりを放送局と通信キャリアとも一緒にどの形でビジネスができるかも相談しながら進めており、ビジネスの拡大に期待をしている。

 また、ソリューション提案において、お客さまのニーズに応えるソリューションをいかにカスタマイズで提供できるかも大事だ。当社の強みでもあるシステムインテグレーション(SI)部門により、お客さまの課題を伺いながら、一緒に課題解決に取り組んでいる。お客さまの理解を深めるとともに不安を払拭できるような活動も行っている。

 23年は二本のソリューションを柱にビジネスを展開するとともに、進化し続けているAI技術や5Gなども活用し、R&Dチームと連携してソニーの新しい技術に取り組みながら、どのように新しい提案ができるか継続的に取り組んでいく。

 当社が持つさまざまなテクノロジーをどうやってビジネスとしていち早く取り組むかにもチャレンジしていく。

 近年注目されているソニーのCrystal LEDを備えたバーチャルプロダクションを活用するなど、新たな映像コンテンツの作り方の市場も作りたいと思っている。グループ会社のソニーPCLが先端技術による新たな表現手法や体験を生み出し発信する場として、「清澄白河BASE」をオープンしている。これから国内のバーチャルプロダクションの発信拠点としても期待できる。

 また、テクノロジーの力で今までのスポーツの楽しみ方を進化させることも良質なコンテンツづくりの一つだと考えている。こうした良質なコンテンツ制作や楽しみの幅を広げることにさらに挑戦し、今後もソニーグループ全社を挙げて力を入れていきたい。