2023.02.16 ローカル5Gで放牧地管理 シャープ、北海道新冠町など9者が実証実験
無人ロボットトラクターによる草刈り作業
シャープ、北海道新冠町など9者は、総務省の開発実証事業として22年11月~23年2月の約3カ月間、ローカル5Gを活用した放牧地管理の実証実験を、北海道新冠郡新冠町のビッグレッドファーム明和で行った。16日には現地で報道陣や関係者らに実証実験の模様を公開した。
「ローカル5Gを介した無人ロボットトラクターの遠隔操作による、軽種馬用放牧地の管理作業の省人化に向けた課題実証」と、「広大な放牧地での分散アンテナによるローカル5Gのエリアの柔軟な構築に向けた技術実証」の二つに取り組んだ。
実証に参加したのは、シャープ、ビッグレッドファーム、北海道新冠町、東芝インフラシステムズ、エクシオグループ、調和技研、ヤンマーアグリ、名古屋テレビ放送、道銀地域総合研究所の9者。
サラブレッドなど競走馬の育成には、広大な放牧地の管理や突発的な業務に伴う長時間労働に加え、従業員の高齢化、熟練者不足といった課題を抱えている。このため労働環境の改善、新技術導入による省人化へのニーズが高い。
今回、課題実証では、ローカル5Gの活用により、ロボットトラクターの作業領域の様子を4K高精細映像として伝送し、リアルタイムに遠隔操作できるシステムを開発。これを使って夏場の草刈りと冬場の除雪作業を無人化した。
技術実証では、小型アンテナを複数設置する分散アンテナシステムを採用しており、同システムがローカル5Gエリアを柔軟に構築できることが確かめられた。
ローカル5Gの電波は直進性が高く、電波の反射が少ない広大なエリアでは、トラクターなど障害物によって通信障害が起こる恐れがある。その対策として小型分散アンテナシステムを構築した。四つの分散アンテナを放牧地の四隅に設置、エリア全体で4K映像の伝送が可能な通信速度(40Mbps以上)が得られた。
また可搬型の基地局設備を必要に応じて移動して運用することができ、より低いコストで柔軟に複数のローカル5Gエリアを構築できることも検証した。
今後、検証したシステムの早期の実用化を目指すほか、同システムを使った新たな用途展開も検討していく。