2023.02.28 AI「民主化」で医療デバイドなくす 画像技術の先頭走者・富士フイルム役員に聞く

携帯型X線撮影装置

 富士フイルムは、医療用画像管理システム(PACS)で1990年代からグローバルリーダー。医療向けAI開発の民主化を通じ、病気のない未来を目指している。「写ルンです」(レンズつきフィルム)をはじめ、長年にわたってフィルム、画像で培った技術が生かされている。事業を担う執行役員メディカルシステム開発センター長の鍋田敏之氏に取り組みを聞いた。

 同社は医療機器(モノ)を中心とした既存事業から、さらに予防や診断、治療に貢献するコトのビジネスへ展開。つまり「モノ+コト」なわけだが、機器とITを共に展開し、PACSへの普及も一段と進み、機器の導入にもつながるといった好循環がある。

 疾患もさまざまで、がんなどで死亡原因の上位になるようなものもあれば、希少疾患もある。それらをカバーするAI技術の開発を社会全体で推進していくためには、AI開発のハードルを下げることが重要。そこで、自社の開発環境を「工学的な知識が少ない医師でもAI開発ができるプラットフォーム」として外部提供している。

 さらには、知見の医療界への普及にも注力。医大の依頼を受け、最先端テクノロジーの浸透を図ったり、技術面やビジネス、薬事関連の理解も深めてもらったりしている。

 また、CSR的な取り組みにも力を入れる。例えば、結核は日本では問題にならなくなったが、特に新興国ではまだ課題。そこで、リュックのようなカバンで運べる、小型・軽量の携帯型X線撮影装置を開発した。医療施設へのアクセスが難しい地方部や離島でも、X線撮影装置とAI技術を使った結核スクリーニング検査が可能になる。

 同社に低線量で高画質を実現できる技術があるからこそで、ほかに例がない。その技術の下地には、「写ルンです」のような蓄積もあるという。

 「世界の地域間格差をなくしていきたい」と鍋田氏は展望する。

(3月1日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)