2023.03.28 【電子部品メーカー・商社 中国拠点特集】中国市場、世界のけん引役へ重要度増す
経済成長が進み、多くの地場有力完成品メーカーや完成車メーカーが台頭している上海
自動車、ITC、産業機器などあらゆる分野で発展続く
日系電子部品企業にとって、中国市場は中長期の事業拡大のための最重要市場の一つ。中国では、自動車やICT、産業機器/インフラなどあらゆる分野で目覚ましい産業発展が続いている。中国市場は、今後も世界のIT/エレクトロニクス市場のけん引役としてより重要度が増していく。
▼自動車市場
中国は世界最大の自動車市場。中国自動車工業協会(CAAM)によると、2022年の中国の自動車販売台数は前年比2.1%増の2686万4000台、生産台数は同3.4%増の2702万1000台となり、ともに2年連続で増加した。特に新エネルギー車(NEⅤ)の販売は同93.4%増の688万7000台と大幅に伸長した。
また、中国の22年の自動車輸出台数は、外国自動車メーカーの供給不足の影響などもあり、同54.4%増の311万1000万台と高い伸びを示した。
国別では、メキシコ向けが前年比で2倍を超える高い伸びとなっているほか、NEⅤの輸出では欧州向けなどが高い実績となっている。
最近の中国では、政府の環境重視方針により、EVやPHⅤといった新エネルギー車の需要が急増しており、今後も高い成長が見込まれる。
中国ローカルのEⅤメーカーの台頭も堅調で、BYDをはじめとする独立系中国EⅤメーカー、欧米系自動車メーカーらとの合弁企業のほか、中国系新興EVメーカーも続々と誕生している。
中国EⅤ市場は23年も22年に続き、生産・販売の両面で高い成長が見込まれる。中国進出の日系電子部品企業は、現地資本のEVメーカーや有力Tier1へのアプローチを強化し、新たなビジネス獲得を目指す。
▼スマートフォン市場
中国国内のスマートフォン販売台数は、普及一巡により17年以降、前年割れ傾向が続いている。米政府による規制の影響で、20年後半以降、ファーウェイの生産減少が顕著となったが、ほかの中国系有力スマホメーカーであるOPPO、vivo、シャオミなどでは、20年後半から21年にかけて、海外輸出を含めた攻勢をかけた。それでも、21年の中国系スマホの生産数量は、半導体不足の影響もあり、当初の計画を下回った。
22年は中国のスマホ市況は一段と悪化し、中国系スマホ各社の生産は、軒並み前年同期を1割以上下回るペースで推移した。そうした中でも、ファーウェイからの分離独立で設立されたHonor社のスマホ出荷は、大きく実績を拡大したと見られる。
中国系有力スマホメーカーは、これまで中国国内向け出荷に加え、インドや中近東、アフリカなどへの輸出でも実績を拡大してきたが、米中摩擦の激化、さらに22年以降は、インド政府による中国製スマホの禁輸措置も痛手となっている。このため、中近東市場やアフリカ市場でのスマホ販売競争が激化し、価格下落を招いているとの指摘もある。
一方で、中国系スマホ各社の旗艦モデル開発では、一段とハイエンド化が進んでいる。現在の中国スマホ市場では、5G端末の構成比がすでに7割程度に達しており、今後は、折り畳み式のフォルダブル端末への参入メーカーの増加も予想されている。
このため、日系電子部品メーカーでは、中国系スマホメーカーのハイエンド機種に照準を合わせ、積極的なビジネス開拓を推進する。23年の中国スマホ市場もしばらくは厳しさが続くとみられるが、23年度第2四半期(4~6月)以降は、前年同期比の出荷数量が反転するとの期待も高まっている。
▼産業機器/ロボット/半導体製造装置市場
中国市場の今後のけん引役として、産機/インフラ関連やロボット市場への期待が高まっている。21年は旺盛な設備投資需要を背景に、FA関連の部品需要は年間を通じて好調に推移し、22年の年明け以降も高水準が継続した。
今後の中国では、長期にわたって続いた「一人っ子政策」の影響もあり、若年労働者不足が深刻化しており、今後、自動化ニーズが一層高まるのは確実。同時に、中国政府による半導体製造装置国産化への動きも、付加価値の高い産機向け部品の需要を創出すると期待されている。
▼そのほか成長市場
中国では、カーボンニュートラルの重要性の高まりを背景に、再生可能エネルギー関連の需要が大きく伸びる見通し。家電も省エネの観点からインバーター化が進み、白物家電の高付加価値化が進展する。監視カメラやドローン、ウエアラブル端末などの分野でも、多くの地場有力メーカーがビジネスを拡大している。