2023.06.21 【日本ものづくりワールド特集】進む製造業のデジタルマニュファクチャリング化 日本が得意な技術伝承 デジタル技術を融合へ

日本が得意な超精密金属加工技術

 製造業のデジタルマニュファクチャリング化が進んでいる。精密金属加工や擦り合わせといった日本が得意な技術を伝承しながら、デジタル技術を融合したプロセスイノベーションが加速する。

 ▼軸受・直動案内機器

 軸受・直動案内機器は代表的な機械要素部品の一つで、半導体・液晶製造装置、電子部品実装機、工作機械、製造装置、搬送装置など幅広い分野で利用されている。

 軸受が回転運動を行うのに対し、直動案内機器はレール面の溝をボール(またはローラー)のかみ合わせによってスムーズな直線運動を行う機械要素部品で「LM(リニアモーション)ガイド」とも呼ばれる。直線運動をする時に金属の加工面が完全に平坦でないとウエービング現象が起き、装置の精度に誤差を与える。超精密加工が要求される。

 軸受・直動案内機器は工場の製造設備に組み込んで使われることが多い。このためこれらの作動状態をセンサーで常時監視し、センサーからのデータの異常を検知してアルゴリズムで解析することで、その装置の故障の前兆を知ることができる。日系軸受・直動案内機器各社はこうした故障予知システムを「CMS(コンディション・モニタリング・システム)」と呼称し、新たな事業として強化している。

 ▼接合技術

 接合技術は製造業にとって必要不可欠な基盤技術になる。電子機器の製造工程で用いられる接合技術は「はんだ付け」「抵抗溶接」「ヒュージング溶接」「パルスヒート接合」「拡散接合」「レーザー加工」などさまざまな工法がある。

 この中で最近注目されているのがレーザー加工技術である。発振器のレーザー光をミラー(またはレンズ)により集光してエネルギー密度を髙め、金属などのワークに照射して熱加工する。これまでファイバーレーザー、YAGレーザー、CO₂レーザーなどさまざまな方式の加工機が製品化されているが、最近は従来のレーザー加工に用いられるレーザー光の波長より短い紫外領域の360~480ナノメートルを用いる青色レーザー加工機が注目されている。青色レーザーは、赤外波長に比べ銅に対する吸収率が高く、特にEVモーター製造で多用される銅材料への加工に適している。

 ▼3Dプリンター

 3Dプリンター市場が航空宇宙、自動車、金型、医療などさまざまな業種・分野に拡大している。金属や樹脂を重ねて造形する3Dプリンターは、金型を作らずに設計データから試作品を製作できるだけでなく、従来の加工方法では難しかった構造のデザインや部品の小型化、部品点数の削減などを積層造形によって実現できる。

 金属を用いる3Dプリンターは材料供給方式に粉末方式とワイヤ方式の2種がある。

 粉末方式は金属粉末を平坦に敷き詰め一層ずつ溶融・凝固を繰り返し積層するため、複雑で高精度な造形が可能になる。

 ワイヤ方式は熱源に制御性に優れたレーザー光を使用し、造形状態に応じた適切な入熱制御により溶接用ワイヤを溶融し、3次元構造を高品質に造形する。

▼ものづくりを支える中小製造業の技術

 全国各地にはユニークな技術や製造プロセスで日本のものづくりを支えている中小製造業が多い。例えば金属製の0.2ミリ角の「さいころ」を作る超精密加工技術(鹿児島県霧島市、キリシマ精工)、エポキシ系、有機系、無機系接着剤でセラミックスと金属との接合技術(福井市、ミテック)、DCモーター、スピンドルモーター向け超精密シャフト(つくば市、三和ニードルベアリング)など。これらはほんのひと握りで、数えきれない企業がある。こうした中小企業の技術はもっと世界に誇りたい。