2023.06.21 EUが経済安保で新戦略 AIや量子技術など流出防ぐ 「保護主義ではない」強調も

欧州委の取り組みは今後、実効性や具体化がカギになりそう

 欧州連合(EU)の欧州委員会は20日(現地時間)、経済安全保障についての新しい戦略を発表した。中国を念頭に地政学的な緊張の高まりと技術革新の加速を踏まえ、「経済の開放性とダイナミズムを最大限に維持しながら、リスクを最小限に抑えることに焦点を当てる」としている。先端技術の流出を規制し、技術の軍事転用やサプライチェーン(供給網)リスクを減らす方針だ。

 発表された声明によると、EUの経済基盤と競争力を促進することで、経済安保を達成するための共通の枠組みを設定。経済安保に対するリスクを特定・評価・管理するための包括的なアプローチを開発する必要があるとしている。

 アクションとしては、経済安保に影響を与えるリスクを評価するための枠組みを加盟国と共同で開発。経済安保に不可欠な技術のリストを作成し、適切な対策を検討する。

 また、経済安保の懸念を踏まえたデューデリジェンスやリスク管理の実施を促すため、民間部門との体系的な対話を続ける。

 さらに「対外投資規制」を導入するなど投資ルールを見直し、デュアルユース(軍民両用)技術の研究開発に対する適切なサポートを確保。デュアルユース品目への輸出管理規制を実施する。

 対外投資規制が念頭に置くのは、欧州企業がAIや量子コンピューターなど先端技術に関連した対中投資をすることで、中国の軍事技術向上につながるといったリスクを減らすことだ。また対内投資面でも、海外企業がEU域内企業を買収したりすることにも対応する見込み。

 欧州委はコメントで「経済的相互依存を切り離すのではなく、リスクを軽減する計画。保護主義ではない」などと通常の経済関係はオープンに続けつつ、経済安保に関連した取り組みを進める姿勢を強調した。

 米国は西側にこうした方針で足並みをそろえることを求めている。