2023.07.14 【電子部品技術総合特集】日本電波工業 上木健一取締役常務執行役員技術本部長

上木 常務

次世代通信方式に重点

車載は信頼性重視の開発へ

 日本電波工業は、長期経営戦略「Vision2030」で掲げるNDKグループのビジョン「周波数でデジタル社会の未来を創る」の方針の下で、先々を見据えた要素技術開発、製品開発に力を注いでいる。

 上木健一取締役常務執行役員技術本部長は「特にR&Dで重点を置くのは、5Gや次世代の6G通信方式に向けた研究開発。車載では信頼性重視の開発に取り組んでいる」と説明する。

 同社は、5Gスマートフォン向けに開発した76.8メガヘルツサーミスター内蔵水晶振動子が米クアルコムの5Gスマホ向けSoCの認定第1号を取得。高品質の原石を自社生産し、フォトリソ技術を生かして超小型水晶デバイスを供給することで、差別化を図っている。

 次世代の153.6メガヘルツサーミスター内蔵水晶振動子の技術開発も進めている。「153.6メガヘルツは、76.8メガヘルツと比較し水晶片の板厚を約半分にする必要があり、バラつきの抑制がテーマ。2年以内のサンプル供給を目指す」(上木取締役)。

 研究開発の中核となる狭山事業所(埼玉県狭山市)では人工水晶の育成、加工技術や、水晶振動子・振動発振子の技術開発、超音波関連の開発などを行う。千歳テクニカルセンター(北海道千歳市)はQCMセンサー開発や無線システムの受注開発などを担当。技術本部では、5年から10年先の研究を行う研究開発部と、水晶デバイス開発やウエハー関連技術などを担当する技術部が、連携しながら活動している。

 アライアンスや産学連携などにも積極的に取り組み、JAXAとの共同研究事業で宇宙探査に応用展開可能なアウトガス分析システムを開発したほか、経済産業省やNEDOの委託事業の研究開発などを進めている。

 開発業務の効率化に向け、機械学習を活用した不良予知システムの実証試験を下期以降、始める方針。脱炭素への取り組みも強化する。「今後も将来を見据えた技術開発に力を注ぐ。知財戦略も推進する」(上木取締役)。