2023.07.25 JX金属グループのLiBリサイクル 実証順調、日独の3拠点結び推進 クローズドループリサイクルを目指す

反応槽の全景

JX金属サーキュラーソリューションズの平井勇一社長JX金属サーキュラーソリューションズの平井勇一社長

拠点の外観の一部拠点の外観の一部

 JX金属が取り組む、使用済み車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル実証が順調に進んでいる。含まれるレアメタルを再び車載用電池の原料として使用する「クローズドループリサイクル」に取り組んでおり、ベンチスケールで、欧州の基準とされる「リサイクル収率」を達成しつつある(既報)。拠点となるJX金属サーキュラーソリューションズ(JXCS、福井県敦賀市)などで生産技術開発や実証を行っている。

 同社グループではJXCSと茨城県日立市の拠点、欧州での事業化推進を目指すドイツ拠点の3カ所を結ぶ形で推進している。

 LiBは、化学反応(酸化・還元)を利用して直流電力を生み出し、高エネルギー密度、高出力密度、高電圧などが特長。世界のLiB需要予測では、脱炭素化に向けて世界各国で電気自動車(EV)普及政策に取り組まれている中、需要も拡大している。

 一方で保管・輸送・処理時の発火や、含有される有害物質による健康・環境被害など、難しさもある。そこで、火災や健康・環境被害を防ぎ、適切な回収や安全な無害化プロセスを進めることが必要となる。さらに資源性(偏在性)も課題。特に地政学的リスクの高い国に生産が偏って生産が寡占化し、中国企業の影響も見られる。資源確保や資源循環の観点からもLiBの適正なリサイクルが要求されている。

欧州電池規則

 こうした中、欧州電池規則が世界のLiBリサイクル業界共通のベンチマーク化。リサイクル事業者は、各金属元素ごとに規定されるリサイクル収率の達成が求められる。

 同社は廃車載LiBの安全・適切な無害化と水平リサイクルによる資源循環の実現、クローズドループリサイクルを目指している。目標は▽廃LiBから取り出したレアメタルを再び電池材料としてサプライチェーンに戻す「バッテリー・トゥー・バッテリー」のクローズドループリサイクル▽電池粉からの高純度金属塩回収技術の確立▽車載LiBモジュールの高度前処理による無害化および高品位電池粉回収技術の確立▽前処理からレアメタル回収まで一貫した実証など。

 EU(欧州連合)の企業とも連携し、リサイクルの事業化を図る。

独自技術

 同社の技術の流れではまず、使用済みLiBを熱処理などで無害化して破砕、ふるい分けし、電池粉を回収する。公開されたプラントに入ると、独特のリズムでふるいが動いていた。目の細かさ、力のかけ方などに独自のノウハウがある。後の湿式工程の負担を軽減するため、ここで電池粉に混入する不純物を削減する必要がある。

 続いて湿式のプロセスがあり、溶媒抽出で金属塩の抽出などを行う。ここでもさまざまなノウハウを駆使する。

 同社では今春までに高純度硫酸Co回収を開始したほか、新規破砕選別設備の稼働開始、高純度炭酸Li回収工程の完成など、ハード面の整備が一区切りついた。欧州電池規則を見据え、主要レアメタル材料(硫酸Ni、硫酸Co、炭酸Li)を高収率・高純度で回収する準商業規模での実証試験を操業している。

 今後、電池技術の進歩に伴い、組成の変化などが見込まれる。車載の場合のバッテリー周りの設計などが変わる可能性もある。そうした変化も見据え、事業化を図っていく考えだ。