2023.09.27 【関西エレクトロニクス産業特集】デジタル時代をけん引する官庁トップに聞く 近畿経済産業局 三浦章豪局長

三浦 局長

新たなリーディング産業育成

蓄電池産業などで推進

 -関西経済の現状と今後の見通しは。

 三浦局長 足下の関西経済は緩やかに持ち直しており、消費も外出機会やインバウンドの増加から、小売りや観光関係などで客足や売り上げが回復傾向にある。一方、食料品など生活必需品の価格上昇が継続、先行きに不透明感がある。

 製造業では半導体や部材供給不足の影響が一部に残る中で堅調な推移だが、今般の中国経済の減速は大きな懸念要因でもある。こうした中でも、企業の設備投資計画では高い投資意欲が見られる。

 この機に国内投資の拡大とイノベーションの促進、また構造的賃上げの後押しなどによる所得向上を図り、経済成長の好循環の実現が重要と思う。

 -貴局では重点分野を年度ごとに定めています。狙いは?

 三浦局長 先が見通せない状況で、民間企業だけが先行して社会課題に取り組むことは困難な状況。国が大きな方向性を対外的に発信・コミットすることで、民間企業の予見可能性を高め、社会課題解決に向けた取り組みを促すことを狙いとしている。今年度は「新たなリーディング産業の育成・イノベーションの創出」「中堅・中小企業の〝稼ぐ力〟の強化」「万博の活用と海外需要を取り込んだ企業の成長促進」の3本柱を重点分野に設定している。

 -「新たなリーディング産業の育成」にある、「蓄電池産業の人材育成・サプライチェーンの強化の取り組み」の進捗状況は。

 三浦局長 脱炭素社会実現に向け、重要となる蓄電池産業に関する人材育成の推進のため、22年度に産学官による「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」を設立(現時点43機関)し、「バッテリー人材育成の方向性」を取りまとめた。

 24年度からの教育プログラム本格導入に向け、今年7月には高校・高専の教員などを対象に、バッテリー教育の説明会を開催。8月以降は産学共同の教育プログラム検討会を数回開き、教育プログラムの具体化に向けて議論を深めている。産総研関西センターを中心に、小型電池製造実習や大学生など向けの専門的な教育プログラムの準備も進行中だ。

 併せて、本省と連携して製造装置メーカーの実態把握に取り組んでおり、教育プログラムとの連携を見据えながら支援策の検討を行う予定。

 将来的には、これらの活動をバッテリー人材育成のモデルケースと位置付け、産学のニーズに応じて全国展開することも視野に入れ加速させたい。

 -スタートアップ支援の進捗状況は。

スタートアップ支援

 三浦局長 政府は昨年をスタートアップ創出元年とし、支援強化を図っている。当局では、関西から世界へはばたく有望なスタートアップ70社を「J-Startup KANSAI」企業として選定、PRや海外展開、ファイナンス、マッチングなど官民一体で集中支援を実施中だ。

 若者の起業促進のために当局が運営する「U30関西起業家コミュニティ」参加者は500人を超え、多くの支援者の協力を得ながら、学びの機会を提供している。

 また「関西Reborn起業家応援特設サイト」では、失敗にネガティブなイメージを持つ起業関心層や再起業を目指している方々に対して前向きなメッセージを発信するなど、さまざまな起業家のチャレンジを支援している。今後も関係機関と連携して関西から多くのスタートアップが誕生・成長するエコシステムの強化に取り組んでいきたい。

 -大阪・関西万博への取り組みは。

地域活性化めざす

 三浦局長 経済産業省の開催地出先機関として、万博開催をサポートすると共に万博を契機にした関西のイノベーション創出や地域活性化を目指した活動を推進している。

 具体的には万博会場外や会期外で万博と連動した活動が活発化するよう、関西の各地に出向き、新たな活動が開始されるよう啓発すると共に、他者の活動の参考となる先進的な取り組みを「360°EXPO拡張マップ」として発信。こうした活動が万博の公式プログラムである「TEAM EXPO 2025」に登録されるよう、各地の企業や団体などに働きかけている。

 さらに、国が万博会場内で主催する日本のものづくり技術を体感・体験してもらう催事や、スタートアップの魅力・価値を国内外の投資家に向けて発信するイベントを企画している。

 万博を成長に結び付けたい企業や、地域活性化につなげたい企業の万博参加を促進していきたい。