2023.10.06 【高専生のための半導体特集】企業紹介 アナログ・デバイセズ

日本の拠点も早くから展開した

 アナログ・デバイセズは1965年、米マサチューセッツ州で創立。グローバルに展開する半導体企業の代表格。高性能アナログICやパワーマネジメント、センサーなど、車載や産業、民生、医療、通信向けなど多彩に展開。近年はリニアテクノロジーやマキシム・イングレーテッドといった同業者の買収も進め、業容を拡大させている。日本でもいち早く70年に拠点を開設した。

 柱の一つ、産業機器分野はアプリケーション別売上比率でほぼ半分を占め、高効率化、低消費電力化にも貢献。ADC(アナログデジタルコンバーター)やDAC(デジタルアナログコンバーター)などを通じ、幅広いソリューションを提案し、産業機器の高度化を後押ししている。

 パートナーである代理店を通じてだけではなく、顧客と直接コミュニケーションするハイブリッド体制も強み。エンジニアの増強など、人への投資も強化している。

半導体で社会を支えたい

フィールドアプリケーションエンジニア 上田葵氏

 アナログ・デバイセズ(ADI)で、インダストリアル部門のカスタマーオフィスでセールスグループに所属するフィールドアプリケーションエンジニア(FAE)・上田葵氏に、高専での学びやそれを生かした今の仕事の働きがい、今後のキャリア像などを聞いた。

 -これまでの経歴を教えてください。

 上田氏 奈良高専で情報工学を学び、その後に進んだ大学院で修士を修め、2021年に入社。フィールドアプケーションエンジニアとして仕事をしています。

 -高専に進んだきっかけは。

 上田氏 学校説明会に家族と参加したこと。自宅でパソコンを作ったりプログラミングをしたりすることが好きだったという下地もあって、技術がすぐ身に付けられると魅力を感じた。

 すぐに就職するのは少し早いと考え、本科の後、専攻科でさらに学び、大学院へ進んだ。

 -就職の際は。

 上田氏 就職活動の際は当初、日系企業を中心に考えていたが、何か一つの分野の担当になるとそこが中心になりがちで、仕事の広がりに限界があるように感じた。

 一方で、ADIの会社や仕事の内容を知るにつれ、さまざまな機械に関わったり、場面に対応したりと、広く経験を積めるのではと思えるようになった。また、さまざまな産業や民生などのアプリケーションで、アナログ半導体が不可欠とされていることを実感し、「半導体から社会を支えたい」との思いも強くなり、入社を決めた。

 -どういうお仕事でしょう。

 上田氏 数カ月間の研修を経て配属された仕事はFAE。顧客と技術的な内容のやりとりを受け持つ仕事で、営業スタッフなどが仕事を受注し、技術的な内容をサポートすることが多い。

 いま主に担当しているのは、ガスや液体などの分析に関わる顧客向けの仕事。生産現場で進む自動化やデジタル化を支援する作業などを担う。社内外との連携も重要になってくる。

 高専で情報系を学んでいた経験が役に立ち、ソフトの改編や測定の自動化などを効率的に進めていくことができている。また、高専時代から、実験などで手を動かすことをいとわず、試行錯誤をすることが習慣化していて、それも役に立っている。

 -心掛けていることは。

 上田氏 仕事はチームで進めることが多い。また客先も、回路の知識などそれぞれの分野のプロフェッショナルで、知見が豊富な人が中心。それだけに、相手の土俵をよく知り、キャッチアップする努力が必要だと研さんに努めている。

 会社で感じるのは風通しの良さ。先輩にすぐ質問ができるし、専門書を執筆しているようなその道の第一人者の先輩でも、質問をすれば気さくに教えてくれる。またグローバル企業だけに、海外の優秀なエンジニアから発信される情報にも触れることができる。

 -目指すキャリア像は。

 上田氏 まずは一人前として成長したい。そしていずれ、自分自身も後進に助言のできるような先輩になりたい。

 -高専で学ぶ後進の人たちにメッセージを。

 上田氏 最近は生成AI(人工知能)の活用も広がっているが、AIにはできないサポートこそが、FAEの役割であり、醍醐味(だいごみ)。特に半導体は社会の中で不可欠で、今後も伸びていく分野だ。エンジニアとして幅広く経験を積み、成長していきたい人にはとても魅力のある分野。ぜひ選択肢に考えてほしい。