2023.10.06 【高専生のための半導体特集】半導体業界の強化の取り組みと今後の抱負 JEITA半導体部会WSC・政策専門委員会 三井豊興委員長

半導体人材育成ネットワーク構築へ

 エレクトロニクスや関係業界の代表的団体、電子情報技術産業協会(JEITA)も高専をはじめ人材強化に取り組んでいる。JEITA半導体部会WSC・政策専門委員会委員長で、同政策提言タスクフォース主査の三井豊興氏に、部会のこれまでの施策や今後の抱負を聞いた。

 -半導体部会の取り組みを教えてください。

課題解決へ政策提言など

 三井委員長 半導体を巡る社会情勢、国際環境が複雑さを増す中、半導体メーカーおよび関連する企業が参画して、半導体に関する政策提言や、人材育成、通商課題に対する取り組み、標準化の推進、環境問題への対応など、業界に共通するさまざまな課題の解決を目指し活動している。

 私たちの身の回りにあるほとんど全ての電気製品、スマートフォンや通信インフラ、最近話題のAI(人工知能)など、いずれも半導体が不可欠なことは認識が広がってきた。コロナ禍と同時期に世界的な半導体不足が起こり、単に需給ギャップの問題だけでなく、サプライチェーンの問題が浮き彫りとなり、国際的な貿易摩擦の中で半導体が戦略物資として扱われたことも背景にある。また、地政学リスクや経済安全保障といった面の影響を受けている。

 こうした状況に対応するため、海外の半導体工業会と「世界半導体会議」(WSC)を通じて連携し、「半導体に関する政府当局間会合」(GAMS)への提言もしている。

 -日本の半導体業界は。

 三井委員長 確かにかつてに比べれば世界に占めるシェアは下がり、最先端ロジックなどは手掛けていないが、高い国際競争力を保持している製品も多く、さらに社会のデジタル化やグリーン化の流れの中で、市場は拡大が見込まれている。また、半導体メーカーだけではなく、半導体装置や原材料など日本が高いシェアを占めている分野も多い。政策的な後押しもあって、国内生産が強化されている。サプライチェーン確保などで各国と協調する動きが広がっていることもあり、日本の業界側と連携したいという打診も多く受けている。

 -そうした中で、人材の取り組みは。

 三井委員長 日本の半導体産業は、初等教育から大学まで一貫した半導体人材育成策を講じる必要があるとの信念をもって、半導体デバイス、装置、材料、半導体を使用するユーザー企業の支援も得ながら全国でオープンな半導体人材育成ネットワーク構築を進めている。半導体関連産業全体で、求められる人材像を整理し、実務経験豊かな講師派遣による出前授業、企業現場での学生の受け入れ、設備の提供など、教育の場を提供するとともに、半導体教育に必要となるカリキュラムについても議論し、まとめ上げることで、半導体関連産業の人材育成と獲得に向けた体制を整えていく。

 -背景には課題感もあるわけですね。

若年層に啓発へ

 三井委員長 JEITA半導体部会の役員会に参画している主要企業の推計だけでも、今後10年間で4万人の人材が必要とされる。ただ、ほかの産業分野も人材確保に努めているだけに、半導体業界も競争に勝たないといけない。次代を担う人材の確保に向けた、半導体業界のプレゼンス向上、若年層に対する啓発を進めている。

 そうした一環で、特に高専向けにはかねてキャリア講演会などを進めてきたが、それを拡充するとともに、半導体関連のカリキュラムづくりを、日本半導体製造装置協会(SEAJ)とも連携して進めている。特に、高専のネットワークで進んでいる九州で先行しての取り組みが検討されている。

 -半導体業界の魅力は。

 三井委員長 動きがダイナミックで、社会の変革には必ず関係していること。パソコンや携帯電話、昨今ならスマホやデジカメ、自動運転、生成AIといった、社会の大きな変化の全てにおいて、キーコンポーネント、基幹部品になっている。パワー半導体もいまの環境問題の解決に必要不可欠だ。

 半導体業界には、たしかに市況の波といったことはあるが、将来に向けて成長していくことは間違いない。また日本企業の良さをいえば、かつてのような終身雇用、年功序列はなくなりつつあるとはいえ、米国のテック企業のように急に雇用が流動化する、といったことはなく、継続してキャリアを積み重ねていくことができる。それも魅力の一つだろう。

 CEATECでもJEITA半導体部会としていろいろなイベントを企画し、情報発信を予定している。