2023.11.28 コバルトフリーで高性能リチウム電池 EVなどに東芝開発 地政学リスクなど対応

試作ラミネート電池の外観

 東芝は27日、コバルトフリーな5V級高電位正極を使った新たなリチウムイオン電池(LiB)の開発を発表した。小型で高電圧が必要な産業用途から、将来的に電気自動車(EV)などの大型用途に至るまで、幅広いアプリケーションへの適用が期待される。2028年の実用化を目指す。

 コバルトは正極材料として広く使われる半面、供給量の懸念やコスト変動、産出国偏在、採掘や精錬時の土壌や水質汚染、生物多様性低下、労働問題などが指摘されている。

 LiBのエネルギー密度を高める特性のあるニッケルも同様に正極に多く使われているが、精錬過程での特定国への偏在などが課題。サプライチェーンのリスクを抑える上で、レアメタルを含まず、安定的調達と資源保全が両立できる材料が求められている。

 また、自動車産業ではモーターやインバーターなど電動システムの高効率化、電池の高出力化に加え、充電時間短縮へ電池パック高電圧化の動きがある。1セルあたり電圧が高まれば、モジュールのセル積層数を減らせ、低コスト化につながる。

 同社は今回、高電位正極の表面で電解液が分解されてガスが発生することや正極材料に含まれる金属が溶出、溶出した金属が負極表面でガス発生を促進するメカニズムを持つことを確認。正極の粒子表面を改質して電解液との反応を抑制する技術に加え、負極表面で溶出イオンを無害化する技術を開発した。

 この技術で、一般的に広く使用されている電解液でも、ガスの抑制が可能になる。また開発技術の実証にあたり、ニオブチタン酸化物(NTO)負極を採用し、1.5Ah級のラミネート型電池を試作。性能を確認した。

 応用先として、まずは電動工具や産業機器など小型で高電圧を必要とする用途への展開を検討。将来的には車載用途への展開を目標とする。

 同社はラボスケールから量産への検証、容量の増加などを見込んでいる。また、ラミネート型だけではなく、円筒型などへも横展開できるとみている。「実装を通じ、脱炭素やサーキュラーエコノミーの実現へ貢献したい」(同社)考えだ。

 (28日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報しています)