2024.01.04 【家電流通総合特集】わが社の戦略 パナソニックマーケティングジャパン 宮地 晋治代表取締役社長

宮地 社長

ビジネスの「型」実現へ
ラストワンマイル構築・強化

 2023年は、コロナ禍の巣ごもり需要の反動に国内家電需要全体も当社販売も大きな影響を受けた1年だったが、第3四半期(10~12月)になってからは、当社販売/シェアが前年を超えてきた。特に年末商戦ではビューティー(理美容)関連商品が好調に推移している。

ヒット商品加速

 23年4月から、チャンネル別販売体制からエリア別販売体制へと組織を変更した。その結果、商品特性にエリア特性を掛け合わせるという商品力×エリアマーケティング活動がうまくリンクし、持ち運びしやすいメンズシェーバー「ラムダッシュ パームイン」では、今までにない形でのヒット商品として実需を加速している。

 ラムダッシュ パームインのように、商品力×エリア特性を生かし、販促を組み合わせたいろいろなマーケティングの「型(スタイル)」が商品ごとにあると思っており、従来取り組んでいる「新販売スキーム」や「当社独自のDX変革によるサプライチェーン体制・改革」を生かし、エリア別販売体制のメリットを最大化していく。

 お得意先(家電流通業界)を見ると、家電量販店は、コロナ禍を経て家電ビジネスの将来を見据え、それぞれのビジネスの方針や目指すべき方向性が明確になっている。一方、パナソニックショップ(PS)には、お客さまへのお役立ちの「型」や、それを目指した変革の在り方、方向性をしっかり示せていなかったと思っている。これからは、20~30年先の家電ビジネスの未来を踏まえ、さまざまな「型」をイメージしたお客さまへのお役立ちの方向性を提示できるようにしたい。PSにとっても、次の時代のあるべき姿を追求する転換点に来ていると思う。デジタル技術によるデジタルトランスフォーメーション(DX)革新が進む中、家電物販にとどまらないソリューション型ビジネスに向けた対応は、PSにとっても重要になってくると考える。

 現在、直販サイト「パナソニック ストア プラス」で購入された大型家電の設置サービスである「ラストワンマイル」の構築・強化を進めているが、このインフラを活用することで、PSのビジネスの「型」を強化できないか検討を進めている。家電物販の規模の大きいPSは設置サービスの担い手(従業員)も多いが、家電物販規模の小さいPSは従業員も少なく、冷蔵庫やドラム式洗濯乾燥機などの大型商品の配送・設置が難しくなっている。ラストワンマイルを活用することで、この課題をクリアできるのではないかと考えている。例えば、物販規模の小さいPSが大型商品を受注した際に、自店では配送・設置サービスができなくても、このラストワンマイルのインフラを使うことで同様のサービスが可能となる。さらに直販サイトの販売規模が拡大していけば、配送・設置を得意とするPSには、直販サイトで購入されたお客さまへの配送・設置を、ビジネスとして一緒に協力して進めるような仕組みを構築できるのではないか。

 こうした取り組みで、PSに新たなビジネスの「型」を拡大していただけると思っている。ビジネスの「型」の実現に向け、昨年12月13日からはドラム式洗濯乾燥機、冷蔵庫、テレビの大型三商品で、エリア限定で配送・設置専門事業者によるトライアルを始めている。

 当社は現在、パナソニックグループが推進する中期経営計画の最終年度の24年度に向け、実行すべき内容を整理している。社内全体の力を集約、変革を加速させ、再びビジネスを成長トレンドに乗せるために何をすべきか明確にする。商品基軸の考え方だけでは日本国内のお客さまへの真のお役立ちは難しいと考えており、保守やメンテナンスに加え、IoT家電におけるソフトウエアアップデートなどのサービスをビジネス化し、お客さまへのお役立ちの付加価値をどこまで高めていけるかを検討していく。

 物流に関して言えば、これまで当社はNX・NPロジスティクス(大阪府摂津市)を活用してきた。しかし、国内家電需要の現在の状況で、トラックの積載効率で非効率な配送が多くなっている地域が発生している。物流の「2024年問題」が目前に控える中、地域独自の効率化や共同配送などの効率性を上げる施策の打ち出しに向け、さまざまな議論を進めている。

 サステナビリティー(持続可能性)の視点を持つことも、ますます重要。当社も昨年12月から「再生済み中古品(メーカー再生品:ドラム式洗濯乾燥機)」の販売を直販サイトで開始した。初期不良などで発売後1年以内に返品されてきた商品などを再生し、販売するようにしている。まずはトライアルとして始め、メーカー保証も1年間付け、安心して購入いただけるようにしている。各商品カテゴリーの上位モデルが中心になると考えており、このような商品は、新品販売時に10年以上といった長期保証を付けるような商品開発力とサービス対応も求められる。

新販売スキーム

 ここ数年来取り組んできた「新販売スキーム」も軌道に乗ってきた。最も成功しているのはドライヤーだ。幅広いラインアップとシェアがないと「新販売スキーム」での安定したボリューム販売と運用は難しい。逆にシェアが高ければボリュームも追求でき「新販売スキーム」で得たキャッシュを革新的な商品開発に回すことでお客さまへのお役立ちを高めるという好循環を生める。23年になってそれがうまく回り始めた。「新販売スキーム」対象モデルの販売構成は、家電全体の中で既に25%にまで高まっている。特に付加価値品が多い白物家電に限れば、4割近くにまで拡大している。

 一部量販店とスタートしている実需連動型SCMの取り組みも成果が見えてきた。これは、メーカーと販売店に製販双方の在庫効率を上げつつ、品切れを無くし、お客さまにもほしい商品が必要な時に手にすることができるという状況をつくり出すという「Win-Win-Win」の良い状況を目指すものだ。この取り組みをスタートし、実需状況や在庫情報をデジタルで共有している一部量販店では、対象商品カテゴリーで即納率が2、3割上がっている。販売DXを加速するものとして、今年も取り組み商品や量販店の拡大を図っていく。