2024.01.04 【家電流通総合特集】家電流通の存在価値 家電量販店 ヤマダホールディングス 山田昇代表取締役会長兼社長CEO

山田 代表取締役会長兼社長CEO

スマートハウスの提案を開始
暮らし丸ごと戦略の要

 昨年の家電市場は、前年並みに推移すれば良いと期初に思っていたが、おおむねそのような流れになっていると感じている。旅行やレジャーといったサービスへの消費傾向が強まる一方、円安の影響もあって、訪日外国人観光客によるインバウンド需要が増えている。

 当社は、こうした環境下で、大型新業態店「ライフセレクト」の店舗フォーマットを確立するとともに、暮らし丸ごと戦略の要の一つとして、〝ヤマダらしい〟スマートハウスの形を提案することができるようになった。家電はどこも同じ商品を扱っており、差別化が難しいため、家電以外を含めた組み合わせによる総合的な提案力で、これからはますます差が出てくると思っている。

 当社のスマートハウスは、太陽光発電や蓄電池、IoTを生かした家庭内機器の遠隔操作だけでなく、電気自動車(EV)もセットにして提供できる。さらに独自の住宅ローンやポイント還元など、他の住宅メーカーでは提供が難しいようなサービスも用意している。お客さまの関心は高く、問い合わせも多い。

 ただ、現状では、スマートハウスを実際に体験できる場所が限られている。スピード感を持って、モデルハウスをライフセレクトの駐車場などに建設していきたいと思っている。

 同時に、各地で土地を確保し、建て売り住宅としての展開も進めたい。

 また、当社がこれまで販売してきた太陽光発電は、数万件という実績に上る。これをネットワークでつなげて、分散しているエネルギーを統合・制御するVPP(仮想発電所)として運用する構想もある。

 当社のスマートハウスだからこそ新たな価値を生み出すものとして、所有者のメリットになるような提案にも生かしたい。

ライフセレクト軸に

 出店戦略では、4000~5000坪(1万3200~1万6500平方メートル)という規模のライフセレクトの出店を継続しつつ、郊外型「テックランド」や、アウトレット品やリユース品を取り扱う「アウトレット店」、EC(電子商取引)の物流拠点としての機能も兼ねる「YAMADA web. com(ウェブコム)」を周辺に展開していく。

 ライフセレクトも全国に30店以上を出店しているが、4000~5000坪のような超大型店の新店建設には時間がかかる。半面、事業コンセプトをしっかり盛り込むにはそれだけの広さが必要でもある。

 アウトレット店とウェブコムは全国の主要地域に整備できたと考えているため、ライフセレクトの衛星店としては、テックランドを含めてS&B(スクラップ&ビルド)が中心になるだろう。

 物流の「2024年問題」が差し迫っているが、当社は全国的な店舗網を生かした効率的な物流体制の構築を以前から続けてきた。大型の物流拠点を慌てて整備するような必要もない。

 パナソニックや日立グローバルライフソリューションズが始めた商品の指定価格についても、当社の物流網を生かせば効率よい配送を実現できるため、メーカーにとってもプラスになっているはずだ。ECにしても、当社にとってはリアル店舗があればこそ規模を拡大できている。

 今年は、物価高がどこまで進むか見通しにくいところはあるが、家電需要が急激に伸びるようなことはないだろう。そうした中で単価アップを図るには、セット提案が鍵を握る。

 店舗への来店客数をカウントしてみても、さまざまな商材を取り扱い、体験もできるライフセレクトの来店客数が増える一方で、全体的には前年を下回っている状況だ。お客さまは家電以外の商材を含めて店舗で体験したいと考える傾向が強まっていると思う。こうしたお客さまの期待に応えるには接客力も問われてくる。

 メーカーから派遣された販売員では、家電以外の商材を含めた総合的な提案は難しい。そのため、数年前からメーカー販売員を減らすとともに、販売員の拡充や教育体制の充実など人的投資を増やしている。

店舗DXにも

 同時に、従業員の負担を軽減するために店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的に取り組んできた。電子棚札が代表的だ。こうした取り組みがここにきて実を結び始めているのを実感している。

 特に家電を軸とした商材の集大成と言えるのが、提案を始めたスマートハウスだ。住宅ビジネスは時間がかかるため、販売を始めたからすぐに売れるものでもない。

 しかし、昨年あたりから徐々に当社の暮らし丸ごと戦略による地力の差が見え始めてきたと手応えを感じている。3年後にはもっと差がはっきりしてくるだろう。

 住宅を建てれば、若い人から年配者まで一生の付き合いになる。家電にとどまらない、衣食住の「住」の領域を丸ごと提案できるようになるために、これまで10年以上をかけて構造改革を進めてきた。その成果がこれから出てくる。追い風が吹いてきたと思っている。