2024.01.10 CESのトレンドをCTAが解説
技術の未来についての展望の手掛かりが語られた
責任あるAIが課題
持続可能性も大きな柱
【ラスベガス(米ネバダ州)=CES取材班】
今年の「CES」の注目点は―。
世界のテック業界が関心を寄せる全米民生技術協会(CTA)によるプレゼンテーションが、開幕前の7日夕(現地時間)、当地であった。プレス向けに設けられるメディアデーの一環。生成AI(人工知能)をはじめとした最新動向が解説された。
CESは内容がきわめて多岐にわたるだけに、全体像をつかむ一助にと、グローバル動向も背景に見どころを解説するもの。近年、リサーチ担当スティーブ・コーニング氏の登壇が恒例だったが、今回はスポークスパーソンのブライアン・コミスキー氏とジェシカ・ブース氏が掛け合いをする形で披露された。
●AIエコシステム
まず、AI(人工知能)。消費者や企業の興奮を呼んでおり、実際、出展のかなりが何らの形でAIに関わっている。AIエコシステムはチップ(半導体)やプラットフォーム、デジタルツイン、ロボットに至るまで広範囲にわたっている。
そうした中、CTAの調査(昨年9月)では、AIに詳しい米国成人の44%は「AIが自分たちの日常生活に既に影響を及ぼしている」または「1年以内に影響を及ぼす」と考えている。
その中で、開発を進めるだけではなく、責任あるAIが課題にもなっており、CTAはそうしたバランスの先頭に立つ、とする。
今回の各社の出展では、独ボッシュが進める、学校の安全性を向上させるAIソリューションの銃探知システムや、シーメンスの産業用メタバースなどが例示された。
●サステナブル
持続可能性も大きな柱。エネルギー効率の向上や、責任あるリサイクル、代替材料や電力のブレークスルーを通じて、温室効果ガス排出量削減などのため開発されたイノベーションと、企業が設定した目標が紹介される。
CTAの調査では、米国成人の約9割が家電製品などのリサイクルが重要と答えている。オフグリッドで電力を供給できる自律型ソーラー充電ロボットや、リサイクルのためのAI搭載ロボットなどが披露される。
インクルーシブ、つまり、だれも取り残さないような包括性(包摂性)を確保することも重要。実際、多様な経営陣を擁する企業は、イノベーションの促進で収益が向上するとの調査もある。そうした問題意識の一環としても、スマートウオッチの車椅子モードなどが展開される。
●デジタルヘルス
健康志向の高まりの中、デジタルヘルスはよりパーソナライズされ、アクセスしやすくインテリジェントになり、影響はさらに拡大する見込み。CTAの調査では、米国の成人女性の3分の2が「デジタルヘルスケアがヘルスケアの未来」と感じているという。
更年期障害の女性向けに、ほてりを予測して冷却パッドを作動させるウエアラブルAIブレスレットや、背中/脳に埋め込まれたセンサーをモニターして痛みを軽減する電気パルスを医師が遠隔から送るツール、手術後の感染症の可能性を予測できるAI活用システムなどが注目される。
さらに、モビリティーも近年の柱。コンセプトカーやインフォテインメント、電気自動車(EV)、自動運転など約300の社が集結。出展者全体の1割弱を占める計算だ。
また「人間の安全保障」も掲げる。経済安全を強化する市場アクセスツールや、コミュニティーの安全性を向上させるスマートコミュニティーテクノロジー、食料安全保障を向上させる農場から食卓までのイノベーションなど、環境問題を超えて人間の安全を強化する技術が特集される。