2024.01.16 【ICT展望 2024】リコー 大山晃社長

リコーの大山社長

デジタルサービスの提供能力拡大
売上比率25年度に60%超へ

 ―2023年の市場環境についてはどう振り返られますか。

 大山社長 23年の国際情勢は、一段と不安定化し、景気回復も鈍化するなど、世界経済は停滞感が深まる一年だった。特に欧州は、景気が停滞し、サプライチェーンの混乱がいろいろなところで表面化した。コロナ禍で物不足となった反動で在庫を積み増し、その調整期に入った。しかし、ポジティブなところも多くあった。世の中のDXへの関心が高まった。お客さまも、生き残りのためにDXをマストと捉え、DX化を推進した。また、電子帳簿保存法(電帳法)やインボイスなど法改正も追い風になった。新たな技術を導入し、競争力を高めていく動きも強くなった。

 ―OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を進めております。進捗(しんちょく)は。

 大山社長 「〝はたらく〟に歓びを」の実現に向け、デジタルサービスの会社への変革に力を注ぐとともに、企業価値向上に取り組んだ。この二つは、ベクトルが同じだ。成功確率の高いもの、将来の可能性の高いものに人材や資源などの経営資源を集中し、デジタルサービスの会社への変革を着実に進めることができた。24年は、デジタルサービスの会社への変革にドライブをかけていく。

 ―デジタルサービスの会社への変革を実現するための戦略は。

 大山社長 当社は、第21次中期経営戦略で、デジタルサービス売上比率を22年度の44%から25年度には60%超達成を目指している。このため、国内外のリソースをデジタルサービスに集中させていく。当社の強みは、グローバルな強固な顧客基盤と顧客接点、ソリューションとして提供できる複合機をはじめとする自社製品、サービスを持つところにある。お客さまのワークプレイスの基盤となるデジタルのインフラサービス(ITサービス)、ビジネスプロセルのデジタル化(BPA)、コミュニケーションサービス(CS)による創造力強化などの支援に力を入れ、着実にデジタルサービスの比率を上げていく。

 M&Aや資本提携により、デジタルサービスの提供能力の拡大を図っている。22年度以降、ITサービス3社、CS4社、アプリケーションサービス1社の買収により体制を強化している。

 ―デジタルサービス事業を支えるデジタル人材強化については、どう取り組まれますか。

人材育成は積極的に

 大山社長 デジタルサイエンティスト、AI人材などデジタル人材の育成に、グローバルで積極的に取り組む。国内ではリコーデジタルアカデミーを創設し、専門的能力強化と全社員対象のナレッジの向上に取り組んでいる。ビジネスインテグレーター、デジタルエキスパートなど重点スキル強化人材を25年度までに4000人にする計画だ。リコージャパンでもプロフェッショナル制度を導入、海外でも日本と同様の人材育成に取り組んでおり、グループ挙げて人的資本戦略を進める。

 ―サステナビリティー経営が求められています。

 大山社長 ESGと事業成長の同軸化を加速させる。事業を通じた社会課題の解決で四つ、経営基盤の強化で三つのマテリアリティーを定めているが、マテリアリティーにひも付く社会課題解決型事業で成長を目指す。これには、社員の自律的な取り組みが必要だ。世界の4万人を対象に行った調査では、90%が社会課題解決につながっていると回答している。お客さまや社員の「〝はたらく〟に歓びを」の実現に向け取り組み、持続可能な社会づくりに貢献していく。