2024.01.17 【計測器総合特集】計測器 24年の戦略 各社トップに聞く 日本電計 森田幸哉社長
森田 社長
中国系企業の対話ノウハウが強み
日本電計の2023年度は、中期経営計画の最終年度となるが、計画比では堅調に推移する。ただ昨年は円安基調が高い水準で継続し、メモリーを中心に半導体の設備投資も低調。春先から始まった中国の停滞も影響を受けた。業績は前年比増で進捗(しんちょく)するが、森田幸哉社長は「市場の伸びを見込んだ計画に対しては厳しい状況だ」と気を引き締める。
昨年9月、独ミュンヘンに現地法人を設置した。顧客である中国資本企業の展開に伴った動きで、初の欧州進出。現地法人のある国・地域は13となった。日本から責任者が着任し、主に中国スタッフがサポートする。森田社長は「中国系企業とのコミュニケーションで求められるノウハウを豊富に持つのが当社の強み」と語る。
受託試験事業では国内に加え、ASEANの「N-CAP」(新車アセスメントプログラム)にも注力し活動の幅を広げる。EMC事業ではIoTの活用が進むにつれ、電磁波干渉による誤動作対策などの必要性から試験需要が増加。相談や設備導入の案件が増えている。ナショナルインスツルメンツの製品を主体としたインテグレート事業も順調に実績を積み上げる。
昨年3月に川崎市に新しく受託試験場を開設。モーターダイナモの設備を持ち、専属スタッフがインバーターなどの評価を支援する。EV化に向けた需要を見込む。
今年、各国で実施予定の国政選挙に注視する。結果次第では国際情勢や業績に影響を与える懸念もあるが、自動車産業を中心に研究開発や設備投資は24年も継続すると見る。納期問題を教訓に、政策的に在庫することで汎用(はんよう)品の迅速な納入にも力を入れる考えだ。
昨年は福島県の農家とコメの作付けに挑戦。収穫物はフードバンクを通じて子ども食堂に寄付などした。社会活動の一環だが、農地に水位計やセンサーを設置して土の組成の計測などを試みた。今後の展開も期待する。
人的資本への投資は引き続き重要な課題。技術職を拡充して質の高いサポート力の向上に努めるとともに、大幅な賃上げで社員の士気を高めたい考えだ。