2024.01.17 【計測器総合特集】計測器 24年の戦略 各社トップに聞く アンリツ 濱田宏一社長

濱田 社長

高砂製作所とのシナジー発揮を期待

 アンリツは主力の通信計測のほか、X線検査機などのPQA、子会社の高砂製作所を加えた環境計測、デバイスなどの各事業を合わせ2030年度に売上高2000億円達成を目標に掲げる。

 23年は物価高によるスマートフォンの買い控えなどが起き、5G投資は減速。だが、濱田宏一社長は「5Gの技術開発がこのまま落ちていくわけではない」と強調する。今後、5GアドバンストやNTN(非地上系ネットワーク)、5GのIoT向け仕様である「RedCAP」など次世代の新規格が予定されており、新たな測定器需要を見込む。

 次世代通信「Beyond 5G(6G)」に対しては、5Gから徐々に開発資源を振り向け強化を図っている。「テラヘルツ」と呼ばれる300ギガヘルツを超える高周波の活用が想定され、新たな測定技術の提供で基礎研究の進展に貢献したい考え。電波を可視化する「電波マネジメント」などにも取り組んでいく。

 通信計測ソリューションの体験施設で導入メリットを紹介するなど、ローカル5G分野にも力を入れてきた。普及には時間を要する見通しだったが、濱田社長は「ローカル5Gの電波状況を評価したいとの要望が徐々に増えてきた」と話す。

 工場の自動化を実現する通信規格でWi-Fiはローカル5Gと競合する場面も想定されるが、濱田社長はローカル5Gの強みは「同時多接続」と指摘。「高信頼性」も強みで、工場の安定稼働でローカル5Gの果たす役割は大きいと説明する。

 業績への貢献も大きな高砂製作所とは「工場の生産体制の効率化を図りシナジーを発揮したい」とする。両社の製品を組み合わせてバッテリーを評価するソリューションの開発にも取り組む。

 昨年から生成AI(人工知能)の普及に伴い、データセンター(DC)向けの計測需要が急増。伝送速度の高速化に向けた投資はしばらく続くとみる。通信向けがメインだったデバイス事業は医療機器分野が成長してきた。眼科の診断機器で組み込み用のセンシング光源は通信向けに比べ、安定した事業で今後に期待する。