2024.04.25 なぜ医療分野でもAIが必要なのか 画像診断で利活用加速
被験者の体動をAIで検知するシステムを搭載した富士フイルムのMRI
生成AI(人工知能)の台頭により、医療分野でもAIの活用が注目されている。AIは、医療現場で欠かせないデータ分析や診断、業務の効率化・向上に貢献しているが、特に活用が進んでいるのが画像診断分野だ。ディープラーニング(深層学習)との親和性が高くAIを使った画像処理技術の開発で、各社がしのぎを削っている。
医療AIの背景
画像診断をはじめ、医療AIの利用が加速する背景には、業務の効率化や診断精度の向上、医師の負担軽減、医療過誤の防止など、医療現場で抱えているさまざまな問題の解決に貢献する期待があるからだ。一方で、膨大化・複雑化する医療データをどのように活用するかという課題もある。
社会的にも、30年までに全世界で1800万人の医療従事者が不足するといわれている。また、日本では医師や看護師らの労働環境や働き方の見直しが求められる「医療の2024年問題」もあり、効果的にAIを活用していく必要性も高まっている。
こうした中、国内ではキヤノンメディカルシステムズや富士フイルム、医療用画像解析ソフトウエアを開発するエルピクセル(東京都千代田区)、内視鏡の画像診断支援を手掛けるAIメディカルサービス(同豊島区)など、さまざまな企業がAIを活用した製品やシステムの開発を進めている。特に深層学習との親和性が高いことから、画像診断分野が注目を集めている。
画像診断分野で進むAI活用
キヤノンメディカルシステムズは、深層学習を用いて開発した画像処理技術をCTやMRIなどにいち早く搭載し、より確度の高い診断をサポートする画像診断装置に強みを持つ。さらに、AI解析技術や3D処理技術といったヘルスケアITを活用し、画像診断装置で撮影した画像を付加価値の高い、診断しやすい情報として提供することで、医師の診断や診療を支援している。
同社の医療AIソリューションでは、CTに深層学習を用いてノイズ除去する画像再構成技術「AiCE」の搭載を18年に始めた。19年からMRIに、20年からヘルスケアIT、21年から超音波診断装置など、アップグレードしながら横展開し機種構成も増やしてきた。
23年から、さらなる高精細化、撮影時間の短縮といった医療現場からのニーズに応え、深層学習を用いた再構成処理により、低空間分解能画像から高空間分解能画像を再構成し画質を向上させる超解像DLR技術「PIQE」を搭載したMRIも展開している。
富士フイルムはメディカルシステム事業において、医療AI技術ブランド「REiLI」の下、独自の画像処理技術やAI技術を生かして、画像診断支援AIプラットフォームや、AIを活用した研究基盤システムの開発、医療ITソリューションなど幅広い領域で診断ソリューションを提供している。
今後、AIの活用によって検査ワークフローのさらなる進化を実現する。医療AI技術を活用した製品・サービスを、30年度までに世界196カ国で導入を目指す。