2024.05.31 【やさしい業界知識】ノイズ対策部品
ノイズ対策用超薄膜シート
電磁波からデジタル機器守る
5G本格化で重要性多分野に
デジタル機器は一般にノイズ(電磁波)に弱い。電子回路に不要なノイズが侵入すると、機器の誤動作の原因となる。
具体的には、スマートフォンの通信機能に障害を起こしたり、パソコンが誤動作するといったトラブルを発生させる。
このため、高周波技術の活用が広がる中で、電子機器におけるノイズ対策技術の重要性は一段と高まっており、これらの課題を解決するための「ノイズ対策部品」の開発が活発化している。
自動運転に不可欠
ノイズは、電磁波の放射を伴うものや、意図せずに、電磁エネルギーの一部を周囲空間や電源ラインなどに放出するなど、予想するのが難しい。とりわけ、近年需要が広がっているデジタル機器はノイズに弱いという特性がある。特に、5Gの本格化で高速大容量通信化が進む情報通信端末や、自動運転技術の高度化に向け安全性が一段と重要となる自動車でのノイズ対策は必要不可欠となっている。
5Gは、スマホなどの専用端末にとどまらず、自動車、製造装置、インフラなど、あらゆる産業に波及することから、多様な分野でノイズ対策の重要性が高まっている。ノイズを出さない、ノイズを受けても耐えられるようにすることがノイズ対策では重視される。
具体的にノイズ対策を施す方法としては、フィルタリングやシールディングが一般的に用いられている。
フィルタリングは、電子機器の信号ライン、電源回路などにコンデンサー、インダクター、複合部品などのノイズ対策部品を用いる方法。これらのデバイスは、電子機器の高密度実装化進展に伴い、一層の小型化が要求されている。
一方のシールディングは、電子機器のハウジングなどに絶縁材料を施すもの。従来のノイズ対策の手法は電子機器を組み立てて、ノイズの有無によってノイズフィルターを実装したり、ケースにシールディングしたりするなどの手法が行われていた。しかし、この手法では電子機器を本格量産するまでの時間の長期化や、コストアップの要因となる。
各国で規制が強化
近年は、コンピューター技術の導入により、ノイズシミュレーション技術が高度化している。電子機器の設計の段階でノイズ対策をサポートできるようになり、ノイズ対策にかかる時間やコストの短縮が図られている。
ノイズ対策技術が高度化している背景には、主要各国で規制が強化されているという側面がある。これはノイズが社会的問題に発展しているためで、各国ではエミッション(電磁放出)、イミュニティー(耐性)の両面で総合的に規制、規格化されている。ノイズに関する規制は日本や欧州、北米などの主要先進国にとどまらず、アジア各国など世界全体に広がっている。
測定、評価も
各国の規制をクリアするには、ノイズを測定、評価し、対策を施す必要がある。ノイズ対策部品の製造販売を行う電子部品メーカーでも、これらのノイズ対策に関するトータルソリューションを事業化している企業もある。
そうした企業では、ノイズを測定、評価するための測定機器を備えた電波暗室を中心とした測定施設を整備し、各国規制への対応を実施している。
(毎週金曜日掲載)