2024.07.12 【電子部品技術総合特集】自動車用電子部品の動向 次世代ニーズ先取りのR&Dに力

最近はHEVの巻き返しも進む(トヨタ自動車が人とくるまのテクノロジー展2024で出品したCROWN HEVのカットモデル)

 電子部品メーカー各社は、自動車の技術変革に向けた技術開発を活発化させている。最近は、自動車のアーキテクチャーの変化に照準を合わせた統合ECU向け高速伝送デバイスや、次世代EV(電気自動車)向けのパワー系デバイスなどの技術開発が進展している。完全自動運転車を視野に入れた次世代車室内部品開発も力が注がれる。電子部品各社は、中長期のビジネス拡大のための最重要分野の一つに自動車市場を位置付け、次世代ニーズを先取りしたR&Dに注力する。

 現在の自動車市場では、「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」をメガトレンドとする技術革新が進み、IT・エレクトロニクス技術の重要性が一段と高まっている。特に、ADAS/自動運転技術の向上や、電動化の進展は、車載用電子部品技術の一層の高度化を求めている。

 自動車の世界生産台数は、乗用車と商用車(トラック/バス)を合わせ、2010年代後半には年間9500万台前後まで拡大した。

 20年は新型コロナウイルス感染症拡大が世界の自動車マーケットに大きな影響を与え、自動車の販売・生産台数が大きく減少。20年秋以降は回復に向かったが、21年から22年にかけては、世界的な半導体不足の深刻化やサプライチェーンの混乱が影響し、主要自動車メーカー各社の減産が相次いだ結果、当初期待された生産台数の回復には至らなかった。

 23年は、半導体供給不足の緩和が進んだことで、欧米や日本を中心に自動車挽回生産が進展し、四輪車の世界生産台数は9000万台近い水準まで回復した。今後も中長期での回復基調継続が予想されている。

 一方で、電子部品メーカー各社の車載関連の受注は20年秋ごろから大きく立ち上がり、21年、22年、23年と3年連続で堅調な推移が継続した。自動車の総生産台数の伸びが小幅にとどまる中でも、ADAS機能搭載車両の増加やxEV比率の上昇などにより車1台当たりの電子部品搭載点数は着実に増加。加えて、21年以降のTier1によるBCP在庫積み増しも車載用電子部品受注を増大させた。

 CASEによるモビリティー革新は、今後も自動車1台当たりの電子部品搭載点数増や搭載部品のハイエンド化を促進する。

 特に「電動化」は、世界的な「脱炭素/カーボンニュートラル」の潮流の中で、20年代に入り、各国政府が相次ぎCO₂排出量排出規制方針やカーボンニュートラル目標などを公表し、これに合わせて、自動車のxEVシフトの動きが加速している。

 直近では、世界のBEV(バッテリーEV)市場の成長にややブレーキがかかっているが、世界最大のEV市場である中国のEV販売は堅調な拡大が継続。また、日本メーカーが得意とするHEV(ハイブリッド車)の販売はここにきて勢いが増している。

 「オートノマス」では、自動運転車/完全自動運転車の実現に向けた開発競争が国内外で活発化している。特に、「自動走行レベル3」以上の自動運転車では、電子部品にも極めて高い信頼性が要求され、AEC-Q200規格対応などの優れた安全性能を付与した電子部品開発が進展している。

 最近の新車開発では、自動車の高機能化に伴い、最近は全体を制御する統合ECUを中核とした新たなアーキテクチャーの導入も広がりつつあり、統合ECU向けの高性能なデバイス開発にも力が注がれている。