2024.07.12 【電子部品技術総合特集】自動車用電子部品のアプリケーション別動向

非接触電力伝送コイルモジュール

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電動車用部品

 電気自動車(EV)やブラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)などのxEVでは、モーターを駆動するためのインバーター、DC-DCコンバーター、車載充電器などの構成ユニットにさまざまな電子部品が使用される。

 インバーターやコンバーターは、小型で高効率が求められ、高電圧で駆動するパワーデバイスが欠かせない。通常のIGBTはシリコンウエハーを使用するが、最近はSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などを用いた高効率なパワーデバイス開発が活発となっている。

 こうした動きに対応し、コンデンサー、抵抗器、コイルなどの回路部品では、高周波スイッチング、高電圧化に対応した新製品開発に弾みがついている。コンデンサーは小型、大容量、長寿命、低ESRなどの特性向上が追求され、抵抗器は小型で高電圧、大電力、低抵抗化などが追求。トランスやコイルは、小型で低損失、高効率などの技術開発が進展。より高温や低温環境に対応できる製品開発にも力が注がれる。

 車載充電器向けは、小型で大容量のアルミ電解コンデンサーなどの新製品開発が活発。xEVの走行距離向上に向け、電子部品の軽量化も追求される。次世代EVでは、モーターとインバーター、ギアを一体化したユニットの「E-Axle(Eアクスル)」の需要増も見込まれるため、その開発も進む。

 EV急速充電用コネクターは、充電規格が乱立する中で、各種充電器規格に対応したコネクターの製品ラインアップの拡充が進む。

ADAS/自動運転関連部品

高速・長距離伝送対応車載カメラモジュール

 自動運転の実現には車外通信性能の高度化や高精度な物体認識、高度な車両制御、AI(人工知能)やエッジコンピューティングを含む情報処理などさまざまな技術の融合が必要。搭載部品への信頼性も重視される。

 電子部品各社は、これらをサポートするため、センサーや制御デバイス、通信モジュール、ノイズ対策部品、撮像系部品、大容量高速伝送用部品などの開発を活発化させている。

 ADAS/自動運転向けのセンサーフュージョンでは、高画素センシングカメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)、赤外線センサーなどの開発が活発。走行中の車の周辺情報を高精度に認識するため、近距離検知、中距離検知、長距離検知など、目的に合わせた車載用センサーが開発されている。

 自動運転レベル3以上で必須とされるLiDARは、既存の機械式に加え、ソリッドステート式LiDARの開発も進む。

 車載カメラは、従来のバックモニター用カメラから、車載センシングカメラへと進化し、高画素化と伝送速度向上のためのデジタル化が進む。車載カメラは、1メガピクセルへの移行が進展し、今後は2メガ/3メガクラスへの移行も進む見通し。

 統合ECUのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)シフトに照準を合わせた高速伝送・高周波デバイスや放熱部品、ノイズ対策部品の技術開発も進む。さらに、将来の完全自動運転車での車室内のビジネスルーム化やリビングルーム化に照準を合わせた、映像・音響関連部品の先行開発に力を入れる企業もある。

安全・快適系部品

アナログTMR角度センサー

 最近の新車開発では、差別化のため、乗員の安全性や快適性、利便性を高めるためのさまざまな機能付与が進んでいる。特に日米欧や中国などのプレミアムカーでは、これらの機能拡張が年々進み、電子部品の新規需要を創出している。

 安全・快適系の電子部品用途は、パワーウインドーやヘッドランプ光軸調整、電動パワーシート、オートスライドドアなど多岐にわたり、今後もさまざまな機能の標準搭載化と新機能創出が見込まれている。

 自動車ガラスの曇り止め用デバイス開発も進む。ドアやトランク、ボンネットなどの開閉検知用防水検出スイッチは、冗長性確保のため、1個のスイッチで2回路以上の同期切り替えが可能な製品が開発。座席シートの姿勢制御センサーや、車室内LED照明システム開発も活発。

 車内での児童やペットの置き去り事故を防止する車室内監視用デバイスとして、ミリ波レーダーや4Dイメージセンサーなどの提案も進む。レーダーやRFを活用することで、外光の影響を受けない高精度モニタリングやプライバシーへの配慮が図られている。

 自動走行レベル3以上の自動運転車では、走行中のドライバーの体調を車自身が把握し、自動運転モードと手動モードの切り替えを随時行う必要がある。これらに対応する生体モニタリングシステム向け部品の開発にも力が注がれる。