2024.07.12 【電子部品技術総合特集】研究開発取り組み イリソ電子工業 三塚茂常務執行役員技術本部長

三塚 常務

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社会課題の解決に貢献
モビリティーの切り口で展開

 イリソ電子工業は、総合コネクターメーカーとして①モビリティー②インダストリアル③コンシューマーの3市場向けに、社会課題の解決に貢献するR&Dに努めている。

 三塚茂常務執行役員技術本部長は「売り上げに占める車載比率が9割近くに達するため、その比率を下げて産機の比率を高めるのが全社方針だが、車載向けの開発を弱めることはない。市場がソサエティー4.0から5.0に移行する中で、モビリティーの切り口で車載に加えて農機や建機への展開を強化する。インダストリアルは通信、産業設備、ロボットにフォーカスした新製品開発に注力する」と話し、インダストリアル、モビリティーともに「高速伝送、高電流、ワイヤ・ツー・ボードをキーワードに開発を進める」とする。

 モビリティーは自動車のEV(電気自動車)化や自動運転化に対応し、「利便性や少子高齢化、環境配慮などを考慮した製品開発を進め、CASEへの貢献を目指す」(三塚常務)。インダストリアルは自動化やロボット組み立て、自動搬送化での通信へのニーズに対応し、高速伝送、高電流対応の新製品開発に力を注ぐ。

 同社は2022年に16ギガbps対応BtoBコネクターをリリース。さらにレベル4以上の自動運転車の統合ECUなどを視野に、32ギガbpsフローティングBtoBコネクターを試作・検証中で、「25年には量産準備を進めたい」(三塚常務)。高電流対応では、70A対応の試作を進める。

 開発体制は日本を中核に、上海にもR&Dセンターを開設。上海R&Dセンターは従来はインターフェース系の応用設計が中心だったが、今年から組織体系を見直し、中国顧客向けの現地設計を強化する。日本人のスペシャリストを総経理として配置し、中国顧客向けのBtoBコネクター開発を行う。「地産地消で『チャイナスピード』に対応した体制を整える」(三塚常務)。

 他社との共同開発や産学連携も重視し、大学と連携して放熱に関するシミュレーションの研究や、高速伝送でのEMC評価の確立などを進めている。

 同社は、コネクター設計での振動や圧力、はんだ応力などを解析するシミュレーションソフトのカスタム開発を行っているが、ここにAI(人工知能)機能を入れ込むことで、カット&トライを削減し、開発リードタイム短縮と最適化設計につなげている。

 脱炭素への対応では、コネクターの梱包(こんぽう)樹脂のバイオマス活用の研究や、コネクター樹脂の再生材活用、低比重金属材料活用などの検討を進める。